ホームセンターの倉庫の中を整理していると今まで無いと思っていた物があったりする。
「さ、除虫菊!?」
そう、蚊取り線香に使う除虫菊の種が観賞用として種があった。
これがあれば虫除けになる。
ただ今年は天候が安定しないらしいので来年植えてみることにしようと決めるのだった。
コ、コケコケ
「おー、よしよしいい子だ」
鶏の飼育は前世でもやったことはあるが流石にひよこのオスメスの鑑定はできない。
卵の孵化も電池式の孵化器がホームセンターにあったのでそれを鳥小屋の見えない所に置いて使わせてもらっている。
温泉とか地熱で孵化させられたら最高なのだが、現状は時間的にも労力的にも孵化器を使わざる得ない。
「鶴〜!」
「わわ! 小麦姫様」
那古野城の一角で飼育しているため、料理の食材調達も合わせて城に出入りすることが多くなったが、そこで小麦姫という吉法師様の1つ年上の姉と出会う。
俺の歴史知識の中では出てこない人物であり、早逝したか、庶子の1人なのだろうと思っていたが、どうやら庶子の1人で、母親の身分が低いらしい。
外交にも使うことができないので家臣への下賜が考えられているらしい。
「ふふん、鶴はいい匂いがするから好き」
「まぁ一応毎日体を洗っているので……」
ホームセンターの道具を使って俺はこっそり毎日風呂に入っていたりする。
洗濯も洗濯機を使うことがあるので普通の人よりは清潔にできているだろう。
「ねえねえ! 今日も遊んでよ! 反転囲碁やろうよ反転囲碁」
「はいはい、1戦だけですよ」
「やったー!」
小麦姫は娯楽が少ないから何か面白い遊びが欲しいとねだってきて、囲碁の石を黒白の半々に塗り直して、囲碁盤を使いリバーシのやり方を教えた。
すると気に入ったのか、俺を見つけるとここ数日はリバーシをねだるようになっていた。
今度はホームセンターにおはじきがあったからそれを持ってこようかな?
綺麗な石程度にしか思わないだろう。
「やった! 私の勝ち!」
「あらら、負けてしまいました!」
「へへーん!」
「おい、小麦! 鶴の独占をするんじゃない!」
「ああ! 吉法師様! いいじゃありませんか!」
「鶴行くぞ!」
「小麦姫また来ますよ」
「うう……」
夏になる前に米の現物を集めることに成功し、大黒兄さんの蔵は蔵貸し含めてパンパンになっていた。
もう既に畿内では米価の価格上昇が始まっているらしい。
そして夏になると雨が降り出し、尾張でも連日大雨が降り続いた。
そして8月になり畿内で不作が確定すると米価が急騰し、1石2.8貫まで上がり、大黒兄さんに今と頼んで米を大量放出した。
俺と兄さんは売り抜ける事が出来たが、不作なのに米が供給されたことで米価は落ち着きを取り戻し、畿内各地の米屋の一部が潰れるだけの被害でケリがついた。
約1万石が約2万8000貫で売り抜けた事で俺の手元には1万6000貫、大黒兄さんも1万2000貫稼ぎ出し、手間賃込みでもほぼ2倍強の利益を確保することができた。
「うひょひょひょ! 家操! 笑いが止まらん!」
「ああ、大黒兄さんやったね!」
莫大な利益を確保できた俺達は兄さんはその金で販路と事業を更に拡大し、俺は兄さんに頼んで国友にて鉄砲の技術解析が行われているらしいので、そこに1000貫積んで幸之助に技術を教えることができないかと相談した。
「ほう、まぁできると思うが、鉄砲はそんなに凄い武器なのか?」
「数を揃えれば戦が変わると思う」
「数を揃えるために技術者がいるわけか……まぁ1000貫積めば弟子を1人受け入れるくらいはできると思うぞ」
「ありがとう兄さん」
俺は直ぐに中村に行き、幸之助に鉄砲の製造技術を学んできてほしいことを頼んだ。
「めんどくせぇ……でも家操、その鉄砲を作れるようになれば工房くれるのか?」
「ああ、ガンガン工房を建てる。最新の技術を満載してな」
「……よし、やってやろうじゃねぇか!」
幸之助もやる気になり、国友村に送られるのであった。
ちょうどその頃国友村でも鉄砲の技術解析が将軍の命令により行われており、幸之助が1000貫の授業料で1年かけて鉄砲製造技術を習得して戻ってくることになるのだった。
売り抜けが成功しまだまだ資金があるので、俺は米相場や尾張国内外の情報を集めることのできる者……つまり忍者を雇うことに決めた。
吉法師様にも石鹸の販路を増やすために噂を広められる草の者(忍者)を部下にしたい、使えなかったら石鹸製造員にすると伝えると
「面白いことを考えるな! いいだろう。余が許可する」
と許可を貰えた。
ただ草の者の伝手が無いので困っていると、そう言えば大黒兄さんが
「津島神社には人の出入りが激しいから巫女さんや神主ならそういう者を知っていると思うぞ」
そう教えてくれた。
津島の大黒兄さんに聞いたため、まずは津島神社に行き、津島神社に参拝に行ったら声をかけていた巫女の霞に聞いてみると
「そうですわね……確かに私達の知り合いに草の職をしている方はいらっしゃいますが……言い触らすのは禁じられていまして……」
「そうですか……」
「3日後にまたいらしてくれませんか? その方に会えないか聞いてみますので」
と3日待つように言われた。
3日後に津島神社に行くと霞の他に普通の商人の様な格好をした男性が立っていた。
「こちらが条件に合いそうな方ですよ。部屋を貸しますのでお二人で話し合ってみてはどうですか?」
「霞さん、ありがとうございます」
神社の離れの1室を借りてその男と中に入る。
「俺の名前は多聞丸……内葉家操さんだろ? 噂は聞いているぜ。吉法師様の部下で石鹸屋と呼ばれているらしいじゃねぇか」
「はい、家操です。霞さんからは情報通の人だと教えてもらいましたがあってますか?」
「なんだ調べてほしい情報でもあるのか?」
「そうですねぇ……正直私の代わりに目や耳になって欲しいと考えてまして、尾張内外の情報や各地の物品の相場何かを継続的に教えてもらえると助かるのですが……」
「俺一人だと無理な話だな」
「ええ、ですからあなたを含めて、あなたの背後の人員も雇いたいと思いまして」
「ほう、俺の上はなかなか金がかかるぞ」
「戦力にならない子供も雇いましょう。そうですねぇ……上は100貫、大人は1人25貫、子供は10貫でどうでしょう。城への潜入等はしなくて良い噂話を拾ってくるお仕事でこの値段は破格だと思いますが……」
「……想像以上の額だな。それなら俺だけでは決めきれねぇ。元締めと交渉してもらっても良いか?」
交渉は持ち越しとなり、翌日の朝、津島神社で待ち合わせてそのまま1日かけて甲賀の里まで行くことになった。
夕方、80キロ以上未舗装の道を歩いたので流石にクタクタになったが、なんとか甲賀の里に到着し、多聞丸が村民と話すと、俺も中に入れてもらえた。
「甲賀郡顔役の望月六郎保高だ。多聞丸から話しは聞いた。我らの技術を高く買ってくれるらしいではないか」
「ええ、草……いや、忍びの者だと思われますが、貴方方の諜報技術を高く買いたい」
「ふむ、いくら出せる?」
「1年で500貫ほど。まとめ役とその部下、それに子供も石鹸作りで雇いたいと思っております。場合によっては諜報の他に稼ぐ手段を与えるのもできるかと」
「うむ……良いだろう。多聞丸と部下5人、子供を10人預けよう」
「ありがとうございます」
「ただし、あくまで諜報活動での値段だ。それ以上の事をやらせるなら相応の額を支払うように頼むぞ」
交渉は纏まり、俺は手足となる忍びを雇う事が出来た。
また1日かけて尾張に人員を連れて戻り、大黒兄さんに頼んで津島と熱田にそれぞれの人が住む場所を用意してもらい、前金として契約の2倍の金を支払った。
それで多聞丸と部下の方達には尾張と美濃を調べてもらうことにするのだった。
子供達はほぼ女の子で、一応くノ一の技術の初歩は身につけているらしいが、熱田の長屋に住んでもらい、石鹸作りに協力してもらうことになるのだった。