1544年 家操11歳
織田·朝倉連合軍美濃侵攻(斎藤道三に撃退される)
畿内が大雨で洪水多発(畿内の米相場が大荒れ)
『佐助……いや、今は家操だったわね!』
「あ、神様ご無沙汰です」
『順調かしら?』
「ええ、あ、神様的には生産性の無いオナホールは不味かったですかね?」
『いや、別に気にしないわよ』
「そうですか……ならよかった」
『それよりも天啓を与えに来たわよ』
「おお、どんな天啓ですか?」
『今年信長が牛乳を飲み始めるから愚連隊にも普及させなさい。できれば牛痘で予防もしておいた方が良いわよ』
「天然痘ですか。そう言えば戦国時代にも天然痘の流行時期が有りましたね」
『今から予防しておけばだいぶ楽になると思うわ』
「わかりましたやっておきます」
『あと硝石作りはしないのかしら?』
「鉄砲の現物が流れてきていないのでまだ無理ですね。必要性を説ける様になればできると思いますが、今は無理です」
『そう……あ、あと今年は金を稼ぐチャンスよ。畿内が歴史に残る大雨で殆ど米が取れなくなるわ。尾張でも夏場は雨が酷いから水害に注意しなさい』
「なるほど、それは良いことを聞きました。上手く使わせてもらいます」
『期待しているわよ』
「歴史的大雨か、尾張にも被害が出るなら先手を打っておくか。となるとある程度現物を用意しておく必要があるな……」
米相場が荒れる事がわかれば利益を出すのは簡単だ。
神様に感謝しないとな。
「手元には7000貫あるから秋の相場で1貫1石計算だったから冬の今は1.2貫で1石か? 夏場が一番相場が上がって1.5貫ほどになるから、そこから凶作となれば相場は跳ね上がるからなぁ……全ツッパは確定としてとりあえず大黒兄さんに相談するか」
俺は大黒兄さんに相談することにした。
「なんだ家操、畿内の米を買えるだけ買いたいなんて、尾張の米じゃ駄目なのか?」
「いや、占いで畿内が荒れる結果が出てね。畿内の米相場が上がると見込んで買い占めたいんだけど」
「なるほどな……家操の手持ちが今預かってるのが7000貫だがどれぐらい買うか?」
「とりあえず6500貫は突っ込みたい」
「具体的な数字は分からないが5200石分は買えると思うぜ」
「じゃあそれで」
「……いや、俺も乗った。春に伊達から椎茸が今年も入りそうと伝えられたから秋の分まで先物取引で売っぱらおう。それで5000貫を抽出して1万石買うぞ」
「大黒兄さん良いの?」
「今まで家操が俺に損させた事がねぇからな! やってやるぞ。忙しくなるぞ!」
大黒兄さんは大博打だと張り切って準備を始めた。
これで上手くいけば凄い利益となるだろう。
あとは中村にも声をかけないと。
「お前が中村の神童と呼ばれる内葉家操か!」
「挨拶が遅れて申し訳有りません織田秀敏様」
「よいよい、吉法師様の部下として働いていると聞いているし……何よりお主の作った吾妻形……あれは良い。息子達も喜んでいったぞ」
「それは何よりです。実は頼みたいことがございまして……」
「なんだ? 申してみよ」
「実は水害や冷害に強い種籾を入手致しまして、中村の皆に分け与えたいのですが、税に直結する米の素を勝手にいじるのはよろしくないと思いまして」
「なるほど……では普通の種籾とその種籾を半々で植えればよかろう」
「では許可をいただけるということでよろしいでしょうか」
「うむ、村の者にも伝えようぞ」
「ありがとうございます。早速皆に配って参ります」
領主の織田秀敏様の許可を貰えたので村人を集めて半分ほどホームセンターで用意した種籾で米を作ってほしいと懇願します。
織田秀敏様に言われた半々の提案は願ったり叶ったり。
ホームセンターの在庫的に全部となれば在庫の殆どの種籾を消費することになるので予備として残せるのは大きい。
それに種籾を更に回収することで将来領主となった時に現代米を植える事ができるようになる。
収穫量、病気の強さ、味、どれをとっても現代米の方が圧倒的に優れているので今までは無作為に広がるのを恐れて解放しなかったが、水害の危機となれば話は違う。
幸い中村に氾濫しても凄まじい被害が起きそうな川は無いため、起こったとしても川沿いの田んぼ数枚に被害が出るだけで済むだろう。
まぁ暴風雨になると思うので倒れづらい米によって腐らない方が重要だ。
「村長や村の皆、俺の事を信じてくれるなら半分で良いから頼む」
「何に水臭い事を言ってるんだ! 佐助のお陰で村は豊かになったんだ! 信じるぜ!」
「そうだそうだ!」
「佐助の米を育てるだよ!」
「ありがとう皆」
一応新しく渡す米と従来の米は分けて育てて欲しい事も伝え、新しい米は織田様から出ているので、種籾として配った同量の種籾を回収するというのは了解されたのだった。
「美味い美味いぞ」
「吉法師様! 牛の乳を飲むのはおやめください!」
「勝三郎は硬いな! こんなにも美味いのに」
「鶴も見てないでなんとか言ってくれよ」
愚連隊で活動していると牛のお産現場に立ち会い、吉法師様が手伝ってやれと言われたので、前世で畜産経験があり、牛のお産には何度も対応していた俺が難産の牛を助産してあげた。
そして子牛が乳を飲み始めたのを見て吉法師様も乳が飲みたいと言い出し、牛の乳を搾って飲み始めた。
牛の持ち主の農民もドン引きしている。
「いや勝三郎様、牛の乳って実は薬なのですよ。確かにこのまま飲むのは腹を下す原因になりますので火を通してからのほうが良いですが」
「む、鶴そうなのか? 腹を下すのは嫌だな。鶴用意しろ」
「は!」
俺は桶を借り、慣れた手つきで乳を搾っていく。
和牛なので乳の出はあまり良くないが、初乳は流石に子牛に与えたが、少し待ってから乳を搾ると2リットルほどの乳を搾ることができた。
それをろ過して鍋で煮詰めて殺菌し、器に牛乳を注いで吉法師様に渡した。
「うむ、直飲みよりも味がまろやかになったな。勝三郎も飲んでみろ」
「うう……」
意を決してゴクゴクと飲むと
「う、美味い」
「だろ?」
と驚いていた。
「五位様から聞いたのですが、昔の貴族の方は牛の乳で作った蘇という食べ物を税として農民から取り立てていたことがあったくらい普通の食べ物だったらしいですよ」
「そうなのか鶴」
「ええ、勝三郎様が言うような牛になるというのは美味い事を知る貴族や僧が農民達が勝手に食べないように広めた嘘なのですよ。牛になるどころか牛乳を飲めば骨が硬くなり、背も高くなると言われていますよ」
「なんと! そうなのか!」
「ええ、実は他にも嘘があり、鶏は刻鳥だから食べてはいけないと言われていますが、実はそれも牛乳と同じようにべらぼうに美味いから広められた嘘で、鶏は飼育するのも楽で野菜のカス等を食べて増えるし、卵もよく産むので家畜として凄い良い生き物なのですよ」
「そうなのか……鶏は食べたことが無いな」
「鶏の糞は田畑の肥料にもなりますし刻鳥ということで那古野城のに鳥小屋を作り飼育してみますか? 幾つか美味しい調理法を知っていますが」
「うむ、それは良いな!」
「鶴は物知りですね。本当に農民だったのですか?」
「ええ、寺や五位様の書庫で必死に勉強いたしました」
吉法師様は牛乳が気に入ったようで、乳が出る牛の居る農家に突撃しては俺に牛乳を作らせるようになった。
そして鶏の飼育も始めるのだった。
「吉法師様、刻鳥を急に飼いだしましたがどうしたのですか?」
「小麦か、なに、俺の部下の鶴が鶏は凄まじく美味い鳥で人の血肉を多く作ってくれると言ってな。飼育することになった。鶴が今度から出入りして鶏の面倒をみるぞ」
「まぁまぁ! それでしたら是非お話してみなければ!」
「余の部下というのを忘れるでないぞ! 奴はやらんからな」
「むう! 吉法師様の意地悪!」
「ハハハ!」