1542年 佐助9歳
斎藤道三が美濃を掌握
小豆坂の戦い
桑原城の戦い……武田対諏訪家の戦い
太平寺の戦い……三好長慶の飛躍の始まり
天文の乱開始(以後数年にわたり奥州大争乱の始まり)
「智、これ熱田で買ってきたんだけど、智に似合うと思って……」
俺は智に髪飾りを渡した。
「わぁ! 綺麗な髪飾り! ありがとう!」
「智、俺とお前来年結婚するじゃん」
「うん」
「……来年から俺武士になろうと思うんだ」
「武士に!? え? 農地を開墾して農民をやるんじゃないの?」
「うん、武士になった方が智に良い生活をおくらせてあげられるし、何より自分の才覚でどこまでやれるか試したい。それに中村で燻っている子達に働き場所を提供しないと」
「うん……正直少し驚いたけど佐助ならきっと武士でもやれると思う!」
「智も支えてくれるかい?」
「はい! もちろんです」
智とのプロポーズをしっかり決めて、俺は次へと動き始めるのであった。
アニキに2人目の子供が産まれ、名前は武蔵になった。
大和ときたら武蔵と思うのは転生者の俺だけかもしれないが、甥っ子が増えた事に喜んだ。
「佐助、今日はどうするんだ?」
「今日は畑の手入れだな。親父何かあるか?」
「いや、本当に武士を目指すのか?」
「ああ、親父も武士に返り咲けるのなら返り咲きたいだろ?」
「……まぁそれが俺の親父の悲願だったからな」
「俺の爺さんは今の領主様の庶子だっけか」
「ああ、だから俺達も一応半農半武ではあるが……まぁ中村の村人は殆どどこかしらに武士の血が入っているがな」
そんな爺さんは俺の産まれる数年前に流行り病で30後半でぽっくり逝ってしまったらしいが……
そのためもう武家としての繋がりは無いに等しい。
「ただ農民から武家を目指すとなると能力があっても運が無いと無理だ。だから必ず生き残る事を優先しろ」
「はい!」
梅雨の時期に椎茸の2度目の収穫期となり、去年の秋とほぼ同等の量の椎茸を収穫することに成功し、1籠分は五位様にあげるとして、2俵分をまた大黒の兄さんに売ることにした。
大黒兄さんは津島に結局店を出したので兄さんの所で椎茸が再び採れたから全部売っぱらい、また2500貫近くの利益を得ることができた。
「大黒兄さん採算とれてる?」
「ああ、これを長島の一向宗とか熱田経由で堺とか石山に売っぱらえば転売しているこっちも1000貫以上の利益が出るからな。前回は親父にだいぶ利益持ってかれたが、今回は俺が売り払う事が出来るから更に利益を得られそうだ」
「ならよかった」
「今回も貯めておくか?」
「うん。あ、あと兄さん俺武士を目指すことにしたから」
「おお! そうかそうか! 五位様の下に弟子入りしたと噂を聞いていたからこのまま五位様の下で働くと思ったが……やっぱり信秀様の下か? それとも一族衆か? 重臣の誰かか?」
「そこは様子を見ながら決めていこうかと思ってます」
「そうかそうか!」
ガシッと肩を組まれ
「俺が金銭面や熱田や津島の繋がりで援護してやるからな」
と言われた。
お礼を言ってまた勘合札を貰って帰宅するのだった。
「園城寺和尚久しぶりです」
俺は和尚の所に遊びに来ていた。
「おお、佐助か! どうした?」
「来年元服するので佐助のままだと格好もつかないので何か良い名前は無いかと思いまして……」
「名前か、ちょっと待っておれ」
そう言うと和尚は紙と筆を取り出し
「儂だけが決めるのもあれだ。儂からは1字贈る。もう1字は五位様から授かるがよかろう」
そう言うと和尚は家という漢字を与えてくれた。
「家なら前にも後ろにもつけることができるし、佐助は家を大きくしたいという夢を前に言っておったろう。家を守るという初心を忘れぬ意味も込めて家という字を贈ろう」
「ありがとうございます!」
そのまま後日五位様に同様の相談をすると
「家をどうするか……うむ、そしたら操ると書いて操(もち)と言う字を後ろに付けるのはどうだ? 内葉家操。うむ良い響きだと思うが!」
「五位様感謝いたします」
「なに、佐助、お前は儂の知らない知識を若いながらに身に着けている本物の天才じゃ。お前さんなら武士として立派に羽ばたく事ができるじゃろう。それにお前さんが偉くなれば育てた儂の名声も上がるからな」
「五位様……」
「なに、せっかくじゃ、来年の元服と婚姻は儂の屋敷でやろうぞ」
とも提案してくれた。
智にも良い婚姻になると思い了承し、少しずつ結婚の準備を始めるのだった。
アニキに俺の農地の引き継ぎをしていた。
「アニキ、この椎茸はあと数年は生えてくるから管理を頼みたい」
「あの美味い茸か。そんなに金になるのか?」
「俺が2俵分の茸を大黒兄さんに売ったら2500貫になった」
「2500貫だと!? それは本当か!」
「ああ、村の皆は茸がそんなに高く売れることを知らねぇ。知っているのはここらだと園城寺和尚くらいだ。ただこの茸がたまたま大量に育ったが、あと2から3年で茸も生えなくなる。それでも1万貫近くの利益になると思う。俺は十分に稼がせてもらったから次の収穫は利益折半で、残りはアニキに全部譲ろうと思う。他の人には絶対に言わないでくれよ」
「あ、あぁ。額が額だ。流石に嫁にも言えねぇ」
「大黒の兄さんが売った分の金は預かってくれるから椎茸売って手元に十数貫だけ残して他は大黒兄さんに管理してもらった方が良いと思う」
「そうだな。幸いうちにはしっかり畑がある。佐助が開墾してくれたこの畑や養蜂だけでもだいぶ余裕があるからな。それに茸の利益があれば織田の殿様が滅亡とかしない限り飢える心配も無いだろう」
「アニキ、親父達を頼むぜ。あと俺が偉くなったら兄さん達も武士に引き上げるから和尚にもう少し勉強を習っておいてくれよ」
「その前に俺が手柄を立てて武士になってやるよ」
「……アニキならやりそうだな」
「まぁ俺の自慢の弟なら直ぐに偉くなるだろう!」
「話変わるけど次の戦はアニキは不参加だよな?」
「ああ、織田様が三河をまた攻めるらしいが、中村の連中は殆どが不参加だな。養蜂の規模が拡大したから戦で稼がなくても余裕があるし」
「その方が良い」
小豆坂の戦いと呼ばれる戦が迫っており、織田の勝利で終わるが敵も味方も手痛い損害を受ける戦である。
ちなみにこの戦から柴田勝家が頭角を現していくことになる。
1543年 佐助10歳
第一次月山富田城合戦終結
鉄砲伝来
「それでは新郎新婦の組酒の儀を行う」
俺は椎茸で得た貯金を使い、大黒兄さんに頼んで智と俺、それに両方の家族に新しい着物を用意してもらい、五位様の屋敷で行う結婚の儀でも恥ずかしくない格好で参列してもらった。
「佐助、凄い緊張するよ」
「大丈夫俺が支えてあげるから」
智が弱音を吐くが、俺が支え、婚姻の儀は恙無く終わっていく。
そのまま俺の元服の儀となり、俺は元服し内葉家操と名を改めた。
五位様から
「似合っているぞ〜」
と言われると少し恥ずかしくなった。
婚姻の儀が終わり、振る舞い酒や料理を堪能し、中村へと戻る。
そこで結納品を贈ったり、木下さん家から贈り物の交換が行われ、俺からはホームセンターにあった新品の鍬、鎌数本、鉈をラベルとか全部剥がした状態のと、日吉丸とその弟(後の秀長)の分の脇差しを渡した。
木下さんからは2貫ほどの銭束が渡され。気持ちとして受け取ってくれと言われた。
「佐助、いや家操のアニキ! オイラもからなずアニキの手伝いができるように頑張るから!」
「おう、日吉丸。お前なら武士でも何にでもなれる才能がある。元服したら早くこっちに来いよ」
「うん!」
中村でやるべきことをやったら、再び熱田に移動する。
熱田にて五位様や大黒兄さんが家を用意してくれたのでそこで住まわせてもらうのだった。
で、当分は貯金を切り崩しながら士官する為の準備だ。
色々な人に挨拶しに行ったり等の就職活動をしなければならない。
ただ時間がある時は五位様の下で働く事を許されており、小者として働くのであった。
【実績 婚姻達成】