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第19章: 天使 ガーディアン

カナデは驚くべき速さでユウに近づき、言葉を交わすことなく温かい抱擁で包み込んだ。まるで、ここ数分間の出来事がただの悪夢だったかのように。ユウは突然の近さに一瞬固まり、完全に驚いていた。その抱擁は短いものだったが、同時にユウがこれまで感じたことのない「守られている」感覚を伝えていた。


カナデ: (小声で、ほとんど囁くように)「無事で本当に良かった…ユウ。呪文がちゃんと効いたの。君を守る時間を稼ぐことができたわ。」


ユウはまだ完全に反応できずにいたが、彼女の言葉を聞いた瞬間、奇妙な温かさが体中に広がるのを感じた。それは、まるで見えないバリアに包まれていたような感覚で、どこか個人的なものを感じさせた。彼女を見つめると、先ほど彼女の体に光を感じたのが偶然ではなかったことに気づいた。


ユウ: (緊張しながら)「あれが君の呪文だったのか?僕を守るための…?」


カナデは軽く頷き、ユウがその努力に気づいたことに満足したように微笑んだ。


カナデ: (穏やかに微笑みながら)「そうよ。保護の呪文をかけておいたの。君をエネルギーのバリアで包んで、少しでも長く耐えられるようにね。それで、私が間に合ったの。」


ユウは感謝しつつも、カナデが自分のためにそこまでしたことに少し顔を赤らめた。普段は気に留めないはずのことが、彼女の行動によって胸に温かいものを生んでいた。


ユウ: (小声で、恥ずかしそうに)「そんなに…僕のためにいろいろしてくれたの?」


カナデは彼の照れた様子を見て、くすっと笑い、軽く頭を撫でた。


カナデ: 「そんなに構えないで。それをしなかったら、どうなっていたか分からないもの。」


ユウがさらに質問しようとしたところで、カナデが続けた。その表情は少しリラックスし、どこか楽しそうだった。


カナデ: (笑みを浮かべて)「実はね、ヒカリと一緒にアニメを観ていたのよ。黄色い髪の男と紫色の犬が戦ってて、すごく盛り上がってたの。でも、その最中に呪文が発動したのを感じて…その場にいられなかったのよね。すぐにテレポートしたわ。」


ユウは完全に驚き、思わず顔をしかめた。


ユウ: 「つまり、アニメのせいで遅れたのか?そんな些細なことで…?」


カナデは全く気にすることなく笑い飛ばした。


カナデ: 「些細じゃないわ。その戦い、めちゃくちゃ熱かったのよ。でも…君が危ないと感じた瞬間、すぐに来たから大丈夫。」


ユウ: (顔を赤らめながら)「それって…なんだか嬉しいような、でもちょっと居心地が悪い気もする。」


カナデは片眉を上げ、優しい笑みを浮かべた。


カナデ: 「居心地悪く感じる必要はないわ。これはただの呪文。それより、アニメの結末知りたくない?」


ユウ: (眉を上げながら)「まさか、今それを話すのか?」


カナデが元気よく頷こうとしたその時、少し離れた場所から声が飛んできた。


ヒカリ: (興奮気味に)「すごかったわ!本当に呪文があんな風に効くなんて!ユウ、何も感じなかったの?」


ユウはヒカリの方に振り返った。彼女の表情は驚きと興奮が入り混じり、彼女が何か特別なものを目撃したような好奇心を表していた。


ユウ: (混乱しながら)「どういう意味だ?それに、なんでここにいるんだ?危険じゃないか。」


ヒカリ: (冗談っぽく)「だってカナデが呪文を使って君を守ったんだよ!こんなこと滅多に見られないんだから!それに、君のためにやったんだから、どう思ったのか聞きたいだけ!」


ユウは状況に完全に困惑し、顔が真っ赤になった。こんなに注目されることに慣れていない彼は、特にカナデの件ではなおさらだった。


ユウ: (しどろもどろで)「そ、そんなこと言われても…ただ驚いてるだけだ。」


ヒカリは楽しそうに笑い、ユウの肩を軽く叩いた。


ヒカリ: 「そんなに固くならないでよ!誰かがこんなに君を大事にしてるなんて、滅多にないことだよ?」


ユウは顔を赤くしたままカナデに目を向けた。彼女はどこか落ち着いていて、これが当たり前だと言わんばかりの表情をしていた。ユウは彼女がこんなにも近くにいて、しかも彼のために大きなことをしていたことをようやく実感した。


ユウ: (小声で、囁くように)「ありがとう…カナデ。本当に、何て言ったらいいか分からない。」


カナデは真剣な笑みを浮かべながら彼の目を見つめた。


カナデ: 「何も言わなくていいわ、ユウ。ただ覚えておいて。私はいつだって君を守るから。」


その瞬間、二人の間の緊張感を感じ取ったヒカリが場を和ませるように大声で笑った。


ヒカリ: 「なんか変な感じ!でも二人の間に何か特別なものがあるのは間違いないね!まるで…」


カナデ: (割り込むように)「ヒカリ、そんなこと言わないで!連れてきたの、後悔するわよ!」


しかし、カナデの

わずかに赤らんだ顔は、ヒカリが言い当てた部分が少しは本当であることを示していた。ユウは言葉にできない何かが二人の間に生まれたことを感じていた。


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