野原の空気が一変した。冷たい風が吹き抜け、優（ゆう）の背筋に寒気が走った。謎めいた少女、リカはまだ彼の前に立っており、その視線は遠くの地平線を見据えていた。しかし突然、空気が重くなり、まるで暗い影が迫ってくるような感覚が漂い始めた。リカは手に持つ刀を強く握りしめ、驚きと警戒の入り混じった表情を浮かべながら緊張感を滲ませた。

優: 「何が…何が起こってるんだ？」

リカはすぐには答えなかった。代わりに周囲を見渡し、いつでも動けるように身構えた。そしてまるで何かの気配を感じ取ったかのように、大地が歪み始めた。地面から黒い影が形を取り、いくつもの異形の怪物が現れた。それらは闇そのものから成るような姿をしており、鋭い爪、空洞の目、そして捻じ曲がった身体を持っていた。それらの怪物たちはリカを取り囲むようにすばやく動き出した。

リカ: 「くそっ！」

リカは素早く刀を抜き、一撃で怪物たちを切り裂いた。闇の化け物たちは彼女の一振りごとに空中に消え去っていった。その様子を優は息を呑みながら見つめていた。リカの動きは驚くほど滑らかで、一つ一つの攻撃が正確で無駄がなかった。

リカ: 「安心して、優。この怪物たちは生きている者を襲わない。ただの影に過ぎない。邪悪に染まった魂が形を成しただけの存在よ。」

優は一瞬ほっとしたが、何かがおかしいと気づいた。周囲を見回すと、怪物たちは次々と現れていた。その中でも特に大きく、他の怪物よりも濃い闇を纏ったものが、彼に向かって近づいてきた。その身体は濃密な影に包まれ、まるで悪夢から現れたような恐ろしい姿だった。

優: 「待って…！あいつ、俺の方に来てる！」

リカは優の言葉を聞き、驚いたように顔を向けた。彼女の目はその巨大な怪物を捉えると、大きく見開かれた。

リカ: 「何…そんなはずない！」

リカはすぐに優の元へ駆け寄ろうとしたが、怪物がそれよりも早く動き出し、鋭い爪を振り上げて攻撃態勢に入った。その怪物から放たれる闇のオーラはほとんど物理的な圧力のようで、周囲の空気をさらに重くしていった。

リカ: 「嘘…そんなことが…！優、早く逃げて！」

リカは急いで優をかばうように前に出たが、怪物の勢いを止めることができなかった。リカの刀が怪物を切り裂いても、その身体は他の怪物たちのように消え去らなかった。それどころか、攻撃を受けるたびにさらに力を増しているように見えた。

リカ: 「どうして…！？こんなこと、ありえない…！」

優はその場で立ち尽くしながらリカの戦いを見守るしかなかった。心臓が激しく脈打つ中、彼の体は恐怖で硬直し、思うように動かなかった。

優: 「俺…何もできない…！」

その時だった。優が目を閉じ、必死に叫んだ。

優: 「リカ！俺だって戦わなきゃ…！」

突然、空気が再び変わった。優の体から温かい光が放たれ始め、その光が怪物を直撃した。怪物は動きを止め、身体全体が震え始めた。リカは驚いた表情で振り返り、光を放つ優を見つめた。

リカ: 「これは…一体…！？」

怪物はその光に耐えられず、激しく揺れながら次第に崩れていった。数秒後、完全に消滅し、跡形もなくなった。

静寂が戻った野原で、リカは呆然と立ち尽くしたまま優を見つめた。

リカ: 

「あなた…力を持っているの…？」

優: 「わからない…でも、たぶん…そうみたいだ。」