そして迎えた試験当日。
当然、後日欠席者向けの予備試験が行われるのだが、仁虞館学園では再試験者の順位は参考記録として処理される決まりとなっている。これにより、黒野が学年一位として扱われることはなくなったという訳だ。少なくとも、
今日も
その最中、彼は奇妙な事態を目の当たりにするのであった。
「まさかこんなことになるとはな……」
***
「事後処理お疲れ様、SNOT。無事、赤坂は一位を獲れたのかしら?」
アジト代わりに使っているラブホテルの
「ああ、そのことなんだが……少々不味いことになった……」
歯切れの悪い様子でどもるように返すSNOT。
「あら? 貴男にしては珍しいわね。黒野は出席停止になったんでしょう?」
「ああ」
「であれば特に赤坂のライバルとなりうる生徒はいないはずだけれど……思わぬ伏兵でも出たのかしら?」
「ああ、伏兵も伏兵だ。俺ですらノーマークだった程のな」
SNOTは背広を脱いでクローゼットのハンガーへと掛け、重力のままにベッドへドスンと腰掛け、タバコへと火を点ける。
「ふうん。貴男ほどのエージェントを出し抜くとは将来有望ね。今のうちにスカウトでもしようかしら」
SALVIAは手に取って数えていたその札束を宙へとばらまき、愉快そうにケタケタと笑っている。
「で……誰なのかしら? その伏兵さんとやらは」
「……聞いて驚くなよ? 学年一位は……なんと白石だ。しかも全科目満点でな」
SNOTは追々試験で13点を取っていた彼女の顔を思い浮かべ、「まさかあの白石がな」と煙を吐く。
「ふうん」
対してSALVIAはニヤニヤと笑ってこそいるが、驚いたような様子は無い。
「あまり驚いてはいないようだな?」
そんな彼女の様子を不思議に思い尋ねるSNOT。
「まあね」
SALVIAは意地の悪い笑みを浮かべてSNOTの方を見つめている。そんなSALVIAのことを不審がっていると、彼女はソファより立ち上がってSNOTの隣へと腰掛けて言った。
「
「まるで意味がわからんな」
SNOTは呆れた様子でタバコを咥え直す。
「ふふ。そうでしょうね」
「はぁ……。で、問題は
着いて行けないと言わんばかりに煙混じりのため息を吐き、SNOTは強引に話題を戻そうとする。
「これで結局、メニューの決定権は白石家のものになるだろう? クライアントは激怒するんじゃないか?」
「まあ、そうでしょうね。でも、依頼内容はあくまで『黒野の排除』。そこは完遂している訳だし、あとは私たちの知ったことではないわ。まあなるようになるわよ」
SNOTの懸念に対し、どうでもよさそうにあっさりと返すSALVIA。今や彼女の興味は全く別のところにあるらしい。
そんなベッド上の美人は、人形のように白く美しい手指を彼の頬へと伸ばし、その顔をゆっくり近づけていく。そして、くすぐるように耳元で囁いた。
「そんなくだらないことよりも、貴男は