迎えた決行の日。給食の時間。
SNOTは、我先にと並ぶ生徒達の列を観察し、自らの計算に狂いがないか確認していた。
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20分前。給食室脇のワゴン待機スペース。給食室はピーク終了からの小休止タイム、生徒や教師は授業中のため滅多にこんな外れの廊下は通らない。まさに仕掛けるのには絶好のチャンスだ。
給食の時間の生徒の動きのアルゴリズムは、今日までの観察データから既に解析済み。そこから今日の生徒のコンディションを踏まえてパターンを算出。直感的な部分にはなるが、そこから微調整を行い、導き出された答えは……。
上から13番目の皿。こいつがアタリ、つまり
SNOTは背広の胸ポケットから綿棒を取り出し、慣れた手つきで右鼻腔へと突っ込む。そうして採取した鼻腔内粘膜を、3年B組のワゴンの上から13番目のスープ皿へとごく薄く塗り拡げ、すばやく元へ戻す。
給食で使われている年期物のプラスチック皿は、色素沈着によってすでに黄ばんでいる。もとより暗殺用の拭い液は透明になるよう成分調整するとはいえ、目立たなくなるに越したことはない。
準備完了。長居は無用だ。
こうして細工を済ませたSNOTは、誰の目にも留められることなく立ち去ったのであった。
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列に並ぶ黒野の順番を確認する。1.2.3……12…よし。ちゃんと13番目だ。あとはアクシデントなどで生徒や皿が前後した場合には、この日給食当番の赤坂が調整してくれるはずだ。ここが上手くいかないと一大事だが……まあここまできたら赤坂を信じるしかあるまい。
SNOTの懸念も杞憂に終わり、黒野が13番目の皿を手に取る。その皿には本日の献立のクリーム煮がよそがれ、アクシデントもなく黒野は席へと戻っていく。
そして全員分の給食の配膳が終わり、待ちに待った食事の時間。クリームシチューが無事に黒野の口へと入る。
「さらば、
随分と手こずったミッションだったがようやく勝利を確認し、SNOTは心の中で哀れな犠牲者に祈りを捧げた。