「……!」
隠していたはずの正体を見透かされ、SNOTの背に緊張が奔る。
いや、冷静になれ。赤坂蓮也は
遅々として進まぬ計画に痺れを切らした母親から、接触をかけるよう指示でもされたか? だとすれば、その目的は協力の申し出か、あるいは作戦実行の催促か?
条件反射的に奔った動揺を表に出さないよう仮面の裏に貼り付け、眼前の中学生の出方を静かに伺う。その立ち振る舞いはお世辞にも堂々としたものとは言い難い。その心の内に秘められているのは迷いや葛藤の類いか……?
「すみません、母から計画については聞かされていまして……。催促をするようにも言われているんです」
やはりか……。
「必要であれば協力をするようにも言われています。申し出が遅くなってしまって申しわけありません……」
「いや、気にするな。これは俺がやるべき仕事だ。
何の罪も無いいたいけな中学生の手を穢させるようではエージェント失格だ。そうだ。俺たちみたいな人種は、依頼人の代わりに汚れ仕事をこなすことだけが存在する意義ではないか。
本来在るべき姿を思い出させられたSNOT。ターゲットへの安易な同情から執行を先延ばしにしていた自分自身の姿が、いやに滑稽なもののように思えてきた。
「で、でも、今日来たのは違うんです……。僕から個人的なお願いで……」
煮え切らない様子で言い淀みながらも、蓮也はSNOTの話を遮る。
「……どういうことだ?」
どうやら事情は異なるらしい。協力でも催促でもないとするとまさか……。
SNOTの脳裏にある一つの仮説が浮上する。そして
「ターゲット……黒野を殺さないでください! 大事な……親友なんです」
口調こそ頼りないが、その瞳には一切迷いは感じられない。確固たる意志で以て、SNOTの目をじっと見据えている。
担任として潜入し分かったこと。それは蓮也と黒野、当人同士はとても仲がいいということだった。ある日突然親友が理不尽に殺されるのを黙って見過ごすというのは、蓮也にとって耐えがたいことであったのだろう。たとえそれが、母親の命令であったとしてもだ。
よく見ると蓮也の足は震えているのが分かる。
「大丈夫だ。
今まで堪えていたであろうものが決壊したのか、大粒の滴が蓮也の両頬からしたたり落ちる。嗚咽にも近い声を上げる蓮也の頭を撫でながら、
……