「今日から君たちのクラスを担当する
クラス中の注目と好奇を一身に浴びながらも、黒板にすらすらと綺麗な字で自身の名前を書き記し、淀みなく爽やかに挨拶を済ませる花岡。彼のその好青年ぶりのおかげか、あるいは前任の評価が地に落ちていたが故の対比によるものか。理由は何であれ、新任のこの教師は、多感な時期である生徒たちからも、大歓迎のもとに迎え入れられたのだった。
まさか彼が偽名を用いて潜入した偽教師だとは、この場にいる誰も思うはずもあるまい。
「先生は結婚してるんですか?」
耳年増な女子からはこんな質問も飛んでくる。彼女は確か……出席番号21番
半ば反射的に、事前調査で頭に叩き込んだ情報との照合をしてしまった後で、別に今その情報が必要ないことに気づいて咳払いをする。
「プライベートについては回答を差し控える」
「えー、ケチー」
質問への回答をはぐらかしたことに対する女子たちからの若干のブーイングこそあれど、彼にとっての最初の
***
「相変わらずの女たらしっぷりだったわね。一応言っておくけれど、彼女たちには手を出してはダメよ?」
「何を当然のことを……。で、このごっこ遊びはいつまで続ければいいんだ?」
ネクタイピンに仕込んだ通信機器を使い、SALVIAとの交信をする花岡、もといSNOT。
「急いては事をし損じる。昔からそう言われているでしょう? せっかくだから二週間くらい学園生活を謳歌してみればいいんじゃないかしら?」
「さっさと終わりにしたいところだけどな」
「あら、学校は嫌いだったかしら?」
「好きなわけがないだろう」
「あら奇遇ね。私もよ。薄汚い孤児院と地獄のような養成学校の記憶しかないわ」
「当たり前だろう。俺たちは
キーンコーンカーンコーン。
「あら
「誰かさんが無駄な話をしてくれなければな」
「人のせいにするようでは、一人前の社会人にはなれないわよ?」
「俺たちみたいな人種が、そんな者になれるとでも思ってるのか?」
花岡は一つため息をつき、次の