「新しい依頼よ、SNOT」
いつものホテルの一室にて。珍しく後から入室したSALVIAが一枚の書類を彼へと手渡す。彼は吸っていた煙草を灰皿へとなすりつけ、その書類を流し見するとわずかながら眉間に皺を寄せた。
「ターゲットは私立
「子どもの喧嘩に親が出るといった話か? それにしても殺害依頼とは穏やかではないな」
「そんな息子想いの母親ならまだよかったかもしれないわね」
肩に提げていたポーチを乱雑に投げ捨てて、ブラウスのボタンを緩めながらベッドの縁へと座るSALVIA。そのままため息交じりに話を続ける。
「9月に行われるPTA懇親会。そこでは3年次の一学期末考査で1位を獲得した生徒の家がメインディッシュを決められるというのが長年の伝統。さっき打ち合わせを済ませてきたのだけれど、好き嫌いの多い依頼人はこの権利にご執心の様子だったわ。で、先日行われた中間考査の結果なのだけれど、1位が黒野君で2位が赤坂君。……もう言いたいことは分かるわよね?」
「ただただターゲットが不憫だな」
「ええ、全くね。でも、これを貰ったからには、仕事はきっちりこなすわよ」
投げ捨てられたポーチの中から一通の茶封筒を取り出し、その中身である法外な額が記された小切手を指先で挟むSALVIA。
「さも自分で
額を左手で押さえながらため息を吐くSNOT。
「ええ。健全な中学生に私の相手は刺激が強すぎるもの」
「だろうな。で、作戦のアテはあるのか?」
「もちろんよ。事前の調査によると、ターゲットのクラスの担任教師は、夜の店での女遊びが趣味みたいね。あくまでこれは私の予想なのだけれど……彼は近日中に
「まったく、簡単に言ってくれるな……。そっちこそぬかるなよ。現担任の排除が失敗すれば、お前の作戦は全てパーなんだからな」
「そこは心配ご無用よ。唯一懸念があるとしたら……今回のお相手は私の……というより世の女性の大半の好みから外れているのよね。後で
「仕事のためだ。それくらい我慢しろ」
「あら。これから可愛い大事な恋人が豚さんに犯されるかもしれないというのに、随分と薄情なのね?」
いつの間にやらスーツを脱ぎ捨てており、下着姿でベッドに横たわるSALVIA。
「お前と付き合った覚えはないがな」
そんな彼女を尻目に、SNOTは再び煙草へと火を点けた。