それは一学期が終わった夏休み初日。
学校が終わったのに、休みになったのにもかかわらず、部活でもないのに学校の屋上に集まっていたのは彼の呼びかけのせいである。神祐希に呼びされた俺達は、暑い暑いと言いながら屋上に集まった。太陽が頂点に達したお昼ごろだったと思う。
「今日は初日から集まってくれてありがとう。今日はみんなにお願いがある。夏休み明けの学校祭にこの四人で一般生徒枠に出場したいと思う。やるのはロックバンド。曲は『生活』。シロップの名曲だ。これなら咲、お前に一度教えたことあっただろう? 余ってる安いギターを貸してやる。俺はもちろんエレキだ。とっておきのエレキを披露してやる。今からでも夏休みに練習すれば十分間に合う。あとはベースとドラムだ。しかし、ベースは今からやったんじゃなかなか厳しい。だからベースは無しのギター二本のスリーピースにする。そこで、小春ちゃんか麗ちゃんのどちらかにドラムをお願いしたい」
「ちょ、ちょっと待てよ。いきなり。いきなり……だな。まあ、前々から考えて決めていたのかもしれないけど、俺にはいきなり言い出したように聞こえた。でも、俺ギターなんて弾けないぜ?」
「ギターソロとかは俺がやる。コード弾きだけでいいんだ。弾いたふりでも。夏休みいっぱい練習すれば間に合うさ。ギターは持ってるだけで、歌だけでも良い。なあ、だから頼む。この通り」
祐希はそう言って頼み込んだ。頭を下げた。こんなに頼み込む祐希を見るのは、初めてに近かった。俺は戸惑い、小春を見た。小春も困っていた。麗を見た。麗はどうするべきか本当に悩んでいた。仕方ない。俺はそれに対して答えを言うことにした。
「わかったよ、お前も学祭でバンド組むって言う夢を諦められないんだろ。軽音楽部に所属してれば難なくできたかもしれないことを、やりたいんだな。その気持ちはなんとなくだけどわかるよ。だから、少しならやっても良い。やらないで後悔するのは、もう増やしたくないからな。歌は麗に任せよう。彼女の歌は綺麗だ。ロックバンドにふさわしいかは分からないけど。俺はギター弾きながら歌うなんて器用なことはたぶんできないから、歌は別だ。ギターボーカルなんてできたら最高にかっこいいだろうけど。ドラムは小春に任せよう。叩くだけ、あるいはバスドラを蹴るだけのどっちかならできるだろ。難しくドンドンシャラシャラ叩きまくるのは無理だろうからな」
二人のことも見る。なんとか頷いてくれる。できるかどうかはともかくとして、なんとか協力してやりたいという気持ちはあると、そう小春と麗は言ってくれた。つまり、やることは決まった。今年の夏は音楽に捧げる。ロックンロールサマーの幕開けだった。