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2-3 掃除

「掃除?」



 小春が聞く。



「そう。屋上ってすごく汚いだろ? ゴミとかたくさんあってさ。だから掃除しようと思って。先生に相談したら掃除道具を色々貸して貰えた」


「いいね。俺も掃除したいと思ってたんだよ。演奏場所でもあるわけだしな! よーし、そうと決まったら、掃除だ、掃除!」



 祐希は一番にゴミ袋を持って、軍手をはめてさっそくゴミを拾いに行った。



「私はモップにしますね。水たまりを無くしていきたいので、吸って絞りますね」



 それはたぶん気休めにしかならないが、麗にはそれを任せよう。



「俺達はちりとりと箒だな。いくらやっても終わらないくらい落ち葉とゴミだらけだけど、ある程度形になればいいんじゃないか。少し見栄えがよくなれば。今のこれはスラム街そっくりだと思うから」


「そうだね。時間もないし、始めようか」



 それから二時間ほどかけて屋上を掃除した。放課後の時間をきっちり使って掃除をした。ゴミというゴミから、水たまりという水たまりから、そのすべてを排除して、取り除く。埃まみれになりながら、塵を舞い上げて、笑いながら。ゴミ袋はいくつも膨れ上がり、その口を縛ってまとめた。ごみ置き場に分けて置けば、用務員の人が片付けてくれるという。



「なんとかなったな。まあ、悪くないんじゃないか」



 メチャクチャ綺麗……ってわけじゃないが、以前よりはきれいになった。ゴミもは少なくなり、水たまりも縮小した。埃と塵で薄汚れていた床も緑の色が見え始めるくらいにはきれいになった。ゴミのように、埃や塵のような邪魔者として隅へ隅へと隠すように屋上へ追いやられた俺達である。いじめら追いやられた、居場所を失った祐希、不良だと噂されて厄介者扱いされている俺、たくさんの知り合いはいるけど実は友達は少ない小春、そして麗。そう、俺は麗のことは知っているようで、実はあまり知らなかった。無理もない。今年二年生になってから仲良くなったのだ。小春とは一年生のときから仲が良いらしいけど、それ以外だと俺のクラスのクラス委員をやっているってことくらいしか知らない。俺は何も知らないのだ。一緒に過ごす時間が増えてきて友だちになりつつはあるけど、それ以上はない。彼女ともそのうちきちんと仲良くなれるだろうか。そんなことを思いながら、今度は掃除用具を片付け始めるのだった。







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