小春は何をしているだろうか。いや、授業中だから授業受けてるんだろうけど、何考えてるだろうか。俺は講義は上の空でそんなことを考えていた。そう思わずにはいられなかった。今朝、小春とちょっとした諍いがあったから。思うところあって、申し訳なかったと考えていた。
起きれなかった。今日も、また。起き上がってもすぐに倒れ込んでしまう。睡魔が襲う。病的に、悪魔的に。今日も俺は普通に行けないのか。情けなく思い、悔しいけど、しかし勝てなかった。
「咲くーん、おはよー」
彼女は今日もいつものようにやって来た。変わらずに、何も変わらずに、いつものように部屋のカーテンを開ける。時刻は八時過ぎくらいだろうか。それとも既に九時くらいだろうか。八時ならば登校の門限には十分に間に合うが、九時では一時間目がすでに始まっている。どちらにしても今日も二時間ほど格闘するのかと思うと、気の遠くなるような思いだし、やはり小春に迷惑だろうと思う。そう考えると、俺はどうしても小春のことが心配でしかたがなかった。小春を巻き込んで、彼女の学校生活に影響を及ぼしているのは間違いない。その原因は俺だ。それは絶対に良くないことで、健全ではなく、俺が批難されるべきこと。小春の普通を壊していることにいつも罪に感じていた。だから、俺はどうしようもなくなってこんな事を言ってしまった。突き放すように。半分くらい本音で。
「なあ、もう放っておいてくれないか。小春」
「え? 起きた、咲くん?」
「今日は、起きれそうだからもういいよ。それと、明日からも来なくていいから。これは俺の問題だし、俺のことでしかないから。もう来なくていいよ」
もう来るな、小春。
そう、突き放した。