向き合う二人の間には少しの沈黙が流れる。ユミは俺をずっと待ってて、コーヒーを飲まずにいたんだ。なのに俺は楽しい時間を独り占めしてしまい、彼女をほったらかしにしてしまった。それを知った時、かなり凹んだよ。どうせユミの奴、先に呑んでるよなーとか考えてたし、楽観的だった自分が恥ずかしくなってしまうぐらい。
ごめんと謝って、優しく許してくれるのはいつもユミの方だ。俺は冷めてしまったコーヒーをユミから奪い取り、俺のをユミの前に置いた。
俺はコーヒーが苦手で飲めない。その俺の為につれてきてくれた居場所。共有してくれている時間。大切にするもの沢山あったはずなのに、お互い当たり前になると、その大事さも大切さも何も気付けないんだ。
失って気付く事って凄く多いからさ。どんな感情でも大切にしたいと思うんだ。
『ちょっと……それあたしのコーヒー』
「いいから」
『飲めないでしょ』
「大丈夫。ここのなら飲めると思う」
『思うじゃないでしょ』
「冷めたのよりぬくぬくのが美味しいから。俺一口飲んじゃったけど。それでもよければ」
『はぁ……もう』
「ごめん」
『……ありがと』
ふふふっと微笑みながら、お互いの感情を確かめていく。ずっと一緒にいれるかなんて分からない。何が正解で何が不正解かも分からない。それでもこうやって共に歩みながら、人生の一部を彩っていく。
正直、ずっと一緒にいたい。そうすればもっと笑顔になれる。苦しく悲しい事もあるかもしれない。勿論喧嘩もあるだろう。それでも、この繋いだ手を離したくないんだ。
笑顔は毀れ
二人は支え
間につなぐものは
コーヒー
ここは幸せの珈琲店。kujicafe