ガシャーンと筆入れを叩きつけた。心の中では涙で沢山で感情を押さえつけるのに必死だった。
「唯どうしたの?」
「あはは。落としちゃった」
「もーう。唯どんくさいんだから」
私は特殊で複数の女子グループを渡り歩いていた。普通ならはぶられるかもしれないが、昔から色々事情を知っている友人は笑いながら私の事を『旅人』って呼んでたっけ。心の叫びは誰にも届かない。これが日常だったから余計に。ただ一人の人物を除いては、誰も私の心情に気付く人なんていなかった。女の子達が私から去った時に一人の人が近づいてきた。そう『たっちゃん』だ。
「何かあった?」
「え……何もないよ?」
「不安定だよね……ゆっちゃん、まさか」
「何?」
「ううん」
心臓がドクンと跳ねた。冷や汗と共に。私の環境を知っているからこそ、続きの言葉を言えなかったんだと思う。今思えば優しさでもあるし、つい口がすべりそうになったのかもしれないね。私の目を見つめながら『大丈夫?』なんて言ってくれる君は私の支えだったのかもしれない。君は無意識なのかもしれないけど、その優しさがつらく思ってしまった。頬が腫れている事に気付かれたのかもしれない。瞳が赤い事がばれたのかもしれない。きちんとファンデーションで隠して、泣き顔もばれないようにしてたのに、すぐ君は見抜いたよね。
「ゆっちゃんはゆっちゃんのままでいいよ。無理しないで」
そう悲しそうに呟きながら、少し距離を置く君とはまた教室で会った。そう隣の席だから避ける事なんて無理なのにね。このまま嫌われるんじゃないかと怯えてた私がいたの。そんな不安と悲しみはすぐに君に届く。放課後になって家庭科の課題が残っていた私は一人で作業をしていた。幼い子供達に『布絵本』をプレゼントする為に、裁縫道具を持って、一人で……。ガランとした空間の中で取り残された私の瞳からは涙が毀れていたんだ。
その時だった。家庭科室のドアがガランと音を立て、誰かの足音がした。毀れた涙を拭いながら、友人だろうと思いながらとびっきりの笑顔で『忘れ物でもしたの?』と言いながら振り向くとたっちゃんがいた。
「どうし……て?」
「一人にさせれないよ。俺も手伝う」
「大丈夫だよ」
「いいから頼って……唯」
いつも私の事をゆっちゃんと呼んでいるたっちゃんが初めて呼び捨てで私を呼ぶ。そのいつもと違う行動に驚きながら、真っ赤になった目を隠す事が出来ずにいた。友人ならすぐ帰るだろうし、じっくり見られる事ないと思っていたから、驚きの連続だった。
「一人で抱え込みすぎ。なんでもかんでも」
「……」
チラリと私の目を見て、全てを察したような表情で、傍にいた。支えてくれるように。
「たっちゃんは、優しいね。さすが皆に慕われてる」
「そんなんじゃないよ。誰にでもこんな事しないから」
「え」
「何でもない、気にしないで」
言葉を隠すように、続きの作業をしよっかと終わるまで手伝ってくれる君の背中が温かく、眩しかった。
私には眩しすぎたの──