電話が鳴る。
液晶を見つめるといつもの名前が表示されている。
神沙(かみざ)と。
彼女は私とは幼い頃の付き合いで家族ぐるみの関係性。
小さい頃は私の方が泣き虫だったのに、いつの間にか私が彼女の精神的逃げ場になっていた。
16から働いている私は、父を亡くし、環境の変化についていけず壊れた人間。
だけどどうにか薬と治療で誤魔化して、友人達にも秘密にしている。
深い関係にはならない、その方が人を傷つけなくて済むから。
それにこんなガラクタな自分を誰が受け入れてくれるのかと言う不安もあるんだ。
そんな見捨てられ不安な私が人の相談とアドバイスをしているのだから、笑ってしまうよね。
「美茄冬(みなと)いつも思うのだけど強いよね」
「何がや?」
「あんな環境の中で生きて、どうしてそんな真っすぐ生きれるの?」
「私は鋼鉄やからなぁ。簡単にゃ崩れたりせんよ」
ほらまたそうやって『嘘』を吐く。
すぐ壊れてしまう癖に、いつまで『まとも』で生きていけるのか不安な癖に。
こうやって相手を安心させる為に『優しい嘘』を吐くんだ。
(いつか私が消えても、悲しまぬように、強くなれよ神沙)
そんな事を思いながら、泣いて止まらない神沙の頭をポンポンと優しく撫で
「大丈夫だ、私が傍にいるから」
そうやって相談を聞きながら、落ち着かすのが私の役目でもあるし。
友人だからこそ、特別だからこそ、ここまで出来るんだと思うぞ?
本当の事は何も知らなくていい。
これは私の優しさだ。
人によっては残酷な『優しさ』かもしれないけれど
これが私の選択なのだから。
神沙…いつもありがとう。