涙は枯れ果て僕は昔の夢を見続ける。
目を閉じていないのに『見える』のはあの時の光景。
虚ろな瞳が映すのは『あの人』の微笑みと…泣き顔。
約束の地で待ちながら『いつかきっと…』と淡い期待を胸に抱く。
瞬きをすると悲しくもないのに涙が溢れる。
毀れる心の雫のように、いつまでもいつまでも夢幻の中で。
「きっと迎えにいくから」
悲しく微笑む『あの人』は幼い僕の心を置き去りにして消滅した。
「まって行かないで」
そう言えていたあの時とは違くて、今の僕はただの壊れたドール。
どこを探しても見つからない、どうして?なんで?
現実なんて見てもいい事ないから、あの時の思い出に揺られる。
目を瞑れば…もう泣きはしない。
そう思い込みながら、僕は待ち続ける。
例えこの身体が朽ちようとも、関係なんてないから。
「焔(ほむら)君は誰を見ているんだい?付き合っているのは僕だろう?」
「…」
「誰と僕を重ねているの?本当は誰を愛しているの?」
「それは…」
「…僕じゃないのだね。君の心の一番には誰もなれないのか…」
「そんな事…」
「僕を見て『誰』かと重ねないで…傷つく。君は誰も愛するべきじゃないよ」
「…そうかもしれないね」
「焔(ほむら)の心をさらった人以外…君を受け入れてくれると思うのかい?」
「…」
「その人の所に行きなよ。そうすれば一番いい」
「…」
「焔(ほむら)?」
「…それ…が……出来たらいいね」
「え」
「もういいよ。理解してもらおうとは思わないから」
僕を思い出して、君の心を支配するのは他の男なんかじゃないよ焔(ほむら)
幼かった君を誑かして、地獄に叩きつけた僕を恨めばいい。
そうしながら、君の心の中で永遠に生き続ける事が出来る。
焔(ほむら)
お願いだから他の人を愛さないで…。僕を独りにしないで。
僕は女。
名前は焔(ほむら)
過去を断ち切れず、ずっと彷徨う弱者。
涙は出ない
もう出しすぎて…出なくなった。
君は空の上で微笑む。
「君の一番は永遠に僕だから…」
水無月の呟き声が…懐かしい声が
音になりながら、僕の心を縛り付けては離さない。
毀れる涙を堪えながら
止める術など分からない。
風の音と共に君の記憶と共に、ここに祈ろう。
いつまでもいつまでも…。