そしてそのまま、口づける。酒を絡め合う舌が、上等な酒故の酒精に熱い。
太夫の身を飾っていたかんざしを丁寧に抜き取り、カイリはその身体から、ゆっくりと夜着を剥いだ。白く、美しい裸体。慣らす必要も無く、容易く指を飲み込む秘所は、すっかり処理が施されており、臭いもあまりない。
男娼は、本当なら肉の様な、臭みが強いものは食べてはならぬ決まりだ。けれど太夫はそれを許された、特例中の特例と言えよう。
ただ職業としてか、太夫も臭みが強いものは好まない。今日の暎鳥飯が、例外だった。
「セイラン」
名を呼びながら、指を奥へと突き入れる。締まる肉壁。少しばかり動かせば、すぐに指が二本、三本と増やせるあたり、やはり高級男娼なのだと思う。
食事で微かに膨れた腹に、カイリは舌を落した。
「ん、カイリ、さま……」
招くように、太夫の手がカイリの髪へと絡む。頭を抱き上げるような仕草に誘われるまま、カイリは舌を上へと這わす。辿りつくのは、黒く膨らんだ乳首。そっと噛むと、髪をすくその手が、ぴくんと跳ねた。
くすぐるような動きに、太夫は不満げだ。
「お預けは、嫌です」
「そうか」
顔を上げて、カイリは乞われるまま、自分の前の方をくつろげた。半立ち程度にゆるゆると起きあがるそれに、身を起こして太夫が手を伸ばす。
「セイラン。今日は、そういう気分なのか?」
かなり積極的なその様に、カイリは思わず尋ねる。しかし、返事は無い。代わりに、どろどろと滑らされ、吸い込まれ、程よい硬さを持つ己のそれに、カイリは声を上げるのを耐えることにした。
何と無く、声を出すのが嫌だっただけなのだが。
「カイリ様。横になってくださいまし」
「いや、そこまでは、いいよ」
体勢が、変わる。入れても良い程度にたちあがった己のものに手を添え、カイリは柔らかくほぐれた太夫のそこへと、ぐりと押しつけた。
「ん、う……カイリ様、の、手」
「何か?」
「ふふっ」
何か堪えるように笑い、太夫はカイリの首筋へと、腕をからめた。それはどこか、困ったような笑みだった。
思わず、何か不味かったかと身構えるが、そこで言われたのは予想外の言葉だった。
「私の手からも……お出汁の匂いがするんです。おかしくて」
「……ああ、それは」
カイリも思わず、笑みを浮かべてしまう。けれど萎えはしなかったのは、早くと急かす、艶めかしい太夫の腰の動きのせいだろう。
紫水楼の夜は長い。昼間はなく、外がいくら明るくなろうとも、戸を開けなければここはいつまでも夜の中。夢の中だ。
みっしりとした肉壁を楽しみ、散らばる嬌声は目に鮮やかな色を浮かべるようで、何とも言えないように思えた。やはり、良いものだな、とカイリは思う。
ただ、次は食事の前に抱こうと、堅く決めたのであった。