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第3話


 そしてそのまま、口づける。酒を絡め合う舌が、上等な酒故の酒精に熱い。


 太夫の身を飾っていたかんざしを丁寧に抜き取り、カイリはその身体から、ゆっくりと夜着を剥いだ。白く、美しい裸体。慣らす必要も無く、容易く指を飲み込む秘所は、すっかり処理が施されており、臭いもあまりない。

 男娼は、本当なら肉の様な、臭みが強いものは食べてはならぬ決まりだ。けれど太夫はそれを許された、特例中の特例と言えよう。


 ただ職業としてか、太夫も臭みが強いものは好まない。今日の暎鳥飯が、例外だった。


「セイラン」


 名を呼びながら、指を奥へと突き入れる。締まる肉壁。少しばかり動かせば、すぐに指が二本、三本と増やせるあたり、やはり高級男娼なのだと思う。

 食事で微かに膨れた腹に、カイリは舌を落した。


「ん、カイリ、さま……」


 招くように、太夫の手がカイリの髪へと絡む。頭を抱き上げるような仕草に誘われるまま、カイリは舌を上へと這わす。辿りつくのは、黒く膨らんだ乳首。そっと噛むと、髪をすくその手が、ぴくんと跳ねた。

 くすぐるような動きに、太夫は不満げだ。


「お預けは、嫌です」

「そうか」


 顔を上げて、カイリは乞われるまま、自分の前の方をくつろげた。半立ち程度にゆるゆると起きあがるそれに、身を起こして太夫が手を伸ばす。


「セイラン。今日は、そういう気分なのか?」


 かなり積極的なその様に、カイリは思わず尋ねる。しかし、返事は無い。代わりに、どろどろと滑らされ、吸い込まれ、程よい硬さを持つ己のそれに、カイリは声を上げるのを耐えることにした。

 何と無く、声を出すのが嫌だっただけなのだが。


「カイリ様。横になってくださいまし」

「いや、そこまでは、いいよ」


 体勢が、変わる。入れても良い程度にたちあがった己のものに手を添え、カイリは柔らかくほぐれた太夫のそこへと、ぐりと押しつけた。


「ん、う……カイリ様、の、手」

「何か?」

「ふふっ」


 何か堪えるように笑い、太夫はカイリの首筋へと、腕をからめた。それはどこか、困ったような笑みだった。

 思わず、何か不味かったかと身構えるが、そこで言われたのは予想外の言葉だった。


「私の手からも……お出汁の匂いがするんです。おかしくて」

「……ああ、それは」


 カイリも思わず、笑みを浮かべてしまう。けれど萎えはしなかったのは、早くと急かす、艶めかしい太夫の腰の動きのせいだろう。


 紫水楼の夜は長い。昼間はなく、外がいくら明るくなろうとも、戸を開けなければここはいつまでも夜の中。夢の中だ。


 みっしりとした肉壁を楽しみ、散らばる嬌声は目に鮮やかな色を浮かべるようで、何とも言えないように思えた。やはり、良いものだな、とカイリは思う。


 ただ、次は食事の前に抱こうと、堅く決めたのであった。


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