いや、待てよ。曲がりなりにも一応、僕と同じ大学を卒業したりんちゃんが何も考えずにあんなことをするわけがない。たぶん、これは僕に対するメッセージだ。
俺は、バリタチじゃねぇ。
そういう、メッセージだ。きっとそうだ。……たぶん、おそらく、きっと。僕はちらりと、りんちゃんの顔色を伺うように視線を向ける。目が合い、そのまま顔をそらされた。
えっ……? 今のってどういう……?
僕が悶々としていると、すでに次の人の自己紹介がはじまっていた。
「俺は
ずいぶんと簡素な自己紹介だ。この人、髪が長くて髭が生えているから浮世離れした人だなぁとは思っていたけれど、絵描きだったわけか。納得。ただ、職業や年収がホントかは分からない。ニートで絵を描いてフリマアプリに売ってる人って可能性もある。
「俺の名前は、
みんな『あ、ちょっと可愛いなコイツ』と思った。
学ランを着て眼鏡をかけた真面目そうな男の子改め『二階堂』は、話しつづける。
「セクシャリティーは……えっと、まだ家族にも言ったことはないんですけど、みなさん知っての通り……ゲイです。あ、あの、あの……一回もその、したことがないのでよく分からないのですが、スマホにタチって書いてあったので、タチです……はい」
か……可愛い。って、ダメだろ僕! 相手は高校生! 未成年の可能性が限りなく百パーセントに近いんだぞ! 子供に対して欲情するのは大人として失格! ゴミクズのロリペドうんこ野郎の性犯罪者予備軍だ!
「あの、何してるんすか?」
僕が両手で自らの頬をべチベチ叩いていると、何だコイツみたいな顔をしてジャージを着た若い男がこちらをジト目で見ていた。
「あ、いや……何でもないよ」
へらへらと笑いながら、ロリペド疑惑をかけられないか不安に思っていると、脳裏にある考えが浮かび上がって来た。
今日あったばかりの高校生に欲情するわけないじゃん、だって、僕は、りんちゃんのことがずっと――……
「ひゃわあああああ!!!!」
「だからお前なんなんだよ……」
みんなの呆れた視線を一身に浴びながら、僕は真っ赤になった顔を両手で押しつぶした。
しょうがないじゃないか。だって、四年ぶりに君に会えたんだから。