「じゃあ、自己紹介するよ~。まずは俺から」
「何でテメェが仕切ってんだよ」
「まあまあまあ、二人とも喧嘩してる場合じゃないっすから」
仕切りたがりの派手な男に、それに絡む長髪で髭の男。さらに彼を制止するジャージの若い男。
「じゃあ、俺から。俺の名前は
そして、スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男(股間にシミあり)が、漁夫の利を得た。
派手な男と長髪で髭の男は、彼を睨みつけた。だが二人ともいい大人なので、自己紹介の邪魔はしない。
「職業は、××××(誰もが聞いたことのある大企業)の製品管理部係長。去年の年収は一千万円。セクシャリティーはゲイで、タチだ」
彼が話し終わると、小さく『おぉ……』みたいなどよめきが起こった。自己紹介において一番最初の人はみんなに注目される。なぜなら、一番最初の人の自己紹介が、その後の人たちの自己紹介の雛型になるからだ。
「おわり。次、誰がやる?」
スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男改め『猫多』は、相変わらずプライドの高そうな表情で、僕たちを見渡した。
「俺だ」
見るからに元ヤン(というか実際にそう)のりんちゃんが、ずいと出てきた。両手をポケットに入れたまま、口を開く。
「俺は
「(年収、言った……!)」
ざわつく僕ら。威張ってるけど、威張れることじゃない。でも、ある意味男らしいかもしれなかった。