すでに一人が死に、生存者は九人。この中に、バリタチが潜んでいる。
僕ら全員が押し黙り、ただ刻一刻と壁にかけられた時計だけが時を刻んでいる。コンクリートの打ちっぱなしで構成された薄灰色の無機質な空間の中央には、先ほど死んだふくよかで丸刈りの男の死体が転がっていた。
「もうやだ……もうやだ……」
部屋の隅には、ツインテールの男の人が壁にもたれかかって泣いていた。彼ほどではないにしろ、ここにいる全員が少なからず精神的ダメージを受けている。
「俺らが生き残るためには、バリタチを見つけ出さねぇとな……」
スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男が、下を向いてぽつりと漏らした。
「そうっすね……」
ジャージの若い男も、彼に同意する。……が、その視線は彼の顔にではなく、股間のシミに向けられていた。
「とりあえずさぁ、今日やる生贄投票、誰にするか決めない?」
派手な男がそう言うと
「そうっすね」
「ああ、いきなり初日でバリタチ投票は危険だからな」
ジャージの若い男と、スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男が賛成した。
「みんな~異議ある~? なかったら、俺から怪しそうなやつ言うね。俺は~」
「あの」
仕切ろうとした派手な男を制止したのは、学ランを着て眼鏡をかけた真面目そうな男の子だった。
「俺は、最初にみんなで自己紹介をした方がいいと思います」
一瞬一時停止みたいに止まった派手な男。その一秒後に彼は
「そうだね」
と、柔和に頬をほころばせた。しかし、その目は笑っていなかった。