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一日目:昼①

 すでに一人が死に、生存者は九人。この中に、バリタチが潜んでいる。


 僕ら全員が押し黙り、ただ刻一刻と壁にかけられた時計だけが時を刻んでいる。コンクリートの打ちっぱなしで構成された薄灰色の無機質な空間の中央には、先ほど死んだふくよかで丸刈りの男の死体が転がっていた。






「もうやだ……もうやだ……」

 部屋の隅には、ツインテールの男の人が壁にもたれかかって泣いていた。彼ほどではないにしろ、ここにいる全員が少なからず精神的ダメージを受けている。




「俺らが生き残るためには、バリタチを見つけ出さねぇとな……」

 スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男が、下を向いてぽつりと漏らした。


「そうっすね……」

 ジャージの若い男も、彼に同意する。……が、その視線は彼の顔にではなく、股間のシミに向けられていた。



「とりあえずさぁ、今日やる生贄投票、誰にするか決めない?」

 派手な男がそう言うと


「そうっすね」

「ああ、いきなり初日でバリタチ投票は危険だからな」

 ジャージの若い男と、スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男が賛成した。



「みんな~異議ある~? なかったら、俺から怪しそうなやつ言うね。俺は~」

「あの」


 仕切ろうとした派手な男を制止したのは、学ランを着て眼鏡をかけた真面目そうな男の子だった。




「俺は、最初にみんなで自己紹介をした方がいいと思います」


 一瞬一時停止みたいに止まった派手な男。その一秒後に彼は



「そうだね」

 と、柔和に頬をほころばせた。しかし、その目は笑っていなかった。

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