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第一の犠牲者②

「ひっ……」

「い゛ぎぃ゛ゃぁああああ゛ああああ゛!!!!」

「ちょっと待って!! ちょっと待って!! 何だよこれまずいって!!!」





 鉄の匂いがあたりに充満し、動かなくなったふくよかで丸刈りの男の腹から、どくどくと血が溢れだして赤い水たまりを作った。


 きっと、自分の死を信じられないまま息絶えるその瞬間を迎えたのだろう、彼の眼球は驚きに見開かれていた。瞳から光が失われて瞳孔がゆっくりと開いていく光景をじっと見つめていると



「何でお前、そんな冷静なんだよ……?」

 半泣きになったジャージ姿の若い男の言葉で我に返る。


「ごめん、ちょっと……現実味がなくって……」

 僕は、ガタガタと震える指を祈るように固く握りしめた。







 一人が死に、残された僕ら九人の間に充満する感情はただ一つ、『恐怖』だ。みんな、動揺を隠せない表情をしている。僕だって、平静なように見えるかもしれないけれど手が、足が震えて体の感覚がない。


 ツインテールの人が、『死にたくない嫌だ助けて』と泣き叫びながら壁を殴っている。スーツを着た神経質そうなサラリーマン風の男は、一見冷たい無表情をしているから平気そうに見えるけれど、よく見ると股間が濡れていた。





 打ちっぱなしのコンクリートで囲まれた無機質な冷たい空間で、全員が各々恐怖に囚われている中、その元凶であるうさ耳ピエロマスクは平然とした様子で僕らに警告する。



『ゲームに参加しない奴他にいる? いねぇよなぁ? あ、いても殺しちゃうけど。ぎゃはははは! てなわけで~、他にも逃げようとした奴、ゲーム関係なく人殺そうとする奴は容赦なくポアすっから、よろしくね~~~!』

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