「投票が一度きりというのは……」
学ランを着て眼鏡をかけた真面目そうな男の子が、口元に手を当ててぽつりとつぶやいた。
そう、僕も引っかかる。だって、
「あまりにも、
『だよね~~~! だけど、最後までちゃんとルールを聞いてね!』
いきなりノリが軽くなった画面の中のうさ耳ピエロマスクは、ちっちっちとひとさし指を振ると、さらにこうつづける。
『もちろん、バリタチ投票以外にもバリタチを見つけるヒントはちゃ~んとあるから安心してね! 君たちには、バリタチ投票とは別に、毎日投票をしてもらいます。その名も、生贄投票。全員で、毎日一回必ず投票をしてもらいます。スマホの投票アプリをタップして、生贄投票を選んでね。最多票を獲得した人が、その夜の生贄となります。生贄に選ばれた人は、朝までこの椅子に座ってもらいま~~す!』
ブラウン管テレビの画面が、うさ耳ピエロマスクの人物から別の場所に切り替わる。僕らが今いる無機質な打ちっぱなしコンクリートの空間と同じ、家のトイレくらいの狭い薄灰色の空間。そこには、死刑囚が座る電気椅子のような椅子があった。
自力では椅子から立ち上がれないように、両手両足を拘束するための手錠が搭載されている。そして、囚人用の電気椅子と違うのは
『そうそう。これ、拘束されるとM字開脚になるんだよね~~!』
画面にはいない、うさ耳ピエロマスクが声を弾ませる。
『ちなみに、全裸で座ってもらいます!!』
ざわざわ……僕たち十人に、困惑と羞恥と、ドン引きのどよめきが流れた。それに追い打ちをかけるかのように、うさ耳ピエロマスクは
『ケツの穴と、ちんちんの裏側が、よ~~~く見えちゃうねぇ~~~はずかしいねぇ~~~~!!!!』
手を叩いてゲラゲラと笑った。僕は、ごくりとつばを飲み込んだ。おそらく、ここにいる十人全員が思ったことだろう。死にたくないのも当たり前だけど、あの椅子に座るのも何としてでも避けたい……!
『生贄が拘束されるのは、全員が生贄投票に参加し、投票結果が発表されてから翌朝の六時までです。つ・ま・り、一晩中裸で強制M字開脚して過ごすってこと! これぞまさに生贄にふさわしいねぇ~~ぎゃっはははは!!』