目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
ゲーム開始前③

 今度こそ、はっきりと目が覚めた。これは、現実だ。じんじんと痛む頬を片手で押さえながら、僕はゆっくりと上体を起こした。そして、目の前に不機嫌そうに居座る花咲 鈴太郎はなさき りんたろうことりんちゃんの姿をじっと見据えた。


「……というか、僕今殴られた!?」

「テメェが起きねえのが悪ぃンだろ」


 りんちゃんは、フンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。『ああ、君は相変わらずだな』なんて、口元が緩んだ。





「あンだよ?」

「えっ、別に何も……久しぶりだね」

「……おう」


 それっきり、二人黙りこくった。気まずい。いてもたってもいられなくなって、下を向いた。あ、下を向くとちょっと首が痛い。というか、今気が付いたんだけれど、床は打ちっぱなしのコンクリートだ。





 ここはどこなんだろう……? きょろきょろと、あたりを見渡す。広い。体育館みたいな場所だ。でも、ステージやバスケットボールのコートみたいなものは何もない。ただただ、薄灰色の無機質な空間が広がっているだけだ。


 それに、そこには、りんちゃん以外にも何人もの人間がいた。いち、に、さん、し、ご……僕を入れて十人だ。なんなんだろう……?


「ねぇ、りんちゃ……」



 じわりと、心に得体のしれない不安感が広がって、それを払拭するように顔見知りの彼の名を呼んだその瞬間、不気味なチャイム音が鳴り響いた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?