目が覚めた。たぶん。僕は、生きている。だって、全身がすごく痛いし、後頭部が心臓の鼓動にあわせてトンカチで殴られているかのようにズキズキと痛むから。
きっと、おばあちゃんが『まだ死ぬな』って現世に戻してくれたんだろうな……なんて感動していると、目の前によく見知った男の人の顔があった。
「りん……ちゃん……?」
僕の幼馴染。大学生の頃から付き合って、六年間同棲して、喧嘩して別れて部屋を出て行ったきり、もう何年も会っていない――
何で……? ああ、そっか。やっぱり僕は死んだんだ。確信する。だって、彼が僕の目の前に現れることなんてない。ありえない。だって、LINEもブロックしたし、あの日からずっと連絡が来たことなんて一度もない。
だから、これはきっと今際の夢だ。神様が死ぬ前に、もう一度だけりんちゃんに会わせてくれたんだ。
「神様、ありがとう……!」
「何気色わりぃこと言っとんだ起きろ!!」
「ひでぶ!!」