暗い。ここはどこだ……? 僕は死んだのか?
遠くに、人の声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声だけれど、それが誰の声なのかは分からない。それに、何を言っているのかも聞き取れない。けれど、心地の良い声だ。
少しぼんやりとしていると、水の流れる音が聞こえてきた。いつのまにか、僕の目の前には川が広がっていた。
「ああ、そうか。これが三途の川ってやつか」
自分を納得させるかのように、ぽつりとつぶやいた。
僕はきっと、さっきの地震で死んだのだろう。しかしまぁ、マンションのベランダが落下して死ぬなんて、まるで子供の頃に見ていたギャグアニメのワンシーンみたいだ。最後まで情けない人生だったな。まぁ、僕らしいと言えば僕らしいが。
自嘲気味に笑いながら『過労死とどっちのほうがよかったんだろうか?』なんて考えていると、三途の川の向こう側におばあちゃんの姿が見えた。
なつかしさに目頭が熱くなりながら、手を振った。今、そっちに行くよと。
「おい! 死ぬんじゃねぇ!!!」
「……えっ?」