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ゲーム開始前①

 暗い。ここはどこだ……? 僕は死んだのか?


 遠くに、人の声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声だけれど、それが誰の声なのかは分からない。それに、何を言っているのかも聞き取れない。けれど、心地の良い声だ。


 少しぼんやりとしていると、水の流れる音が聞こえてきた。いつのまにか、僕の目の前には川が広がっていた。


「ああ、そうか。これが三途の川ってやつか」

 自分を納得させるかのように、ぽつりとつぶやいた。





 僕はきっと、さっきの地震で死んだのだろう。しかしまぁ、マンションのベランダが落下して死ぬなんて、まるで子供の頃に見ていたギャグアニメのワンシーンみたいだ。最後まで情けない人生だったな。まぁ、僕らしいと言えば僕らしいが。


 自嘲気味に笑いながら『過労死とどっちのほうがよかったんだろうか?』なんて考えていると、三途の川の向こう側におばあちゃんの姿が見えた。


 なつかしさに目頭が熱くなりながら、手を振った。今、そっちに行くよと。


「おい! 死ぬんじゃねぇ!!!」

「……えっ?」

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