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第2話 俺を拾った男

 なんなんだよこの人、ほんとに……!

 つうかこの人、俺より上? 下? どっちともとれる感じなんだよなぁ……


「つうか、貴方なに者なんですか」


「え? 俺、はいゆーだよー」


 男が甘えた声で言うんじゃねぇよ!

 そうは思うものの嫌な感じはせず、それよりも俺は言われた言葉の意味を考えた。

 はいゆー……俳優? 他に変換しようがないよな、今の言葉……


「て、まじで?」


「ほんとだよー。ドラマとか出てるんだよ?」


 へらへらと笑いながら彼は言った。

 ほんとかよ? まあ言われてみれば顔だちいいし、肌きれいだし、あながちウソじゃなさそうだけど……

 正直信じらんない。そして俺は、テレビ見ないから彼を知らない。


「すみません、ドラマとか見ないから……」


 ちょっと申し訳なく思いながら、俺は小さく呟くように言った。

 つうかいまどきテレビ見るやつ、少ないんじゃねぇかな。

 俺の周りを思い出してもテレビ持ってないやついたし。見るとしても動画サイトくらいだ。


「あはは、そうだよねー。おかげで知らないやつと寝てもバレないバレない」


 と、へらへらと笑いながら言った。

 いや……それってどういうことだよ……?

 ある可能性の事を考えて、俺の中で血の気が引く音がする。

 裸で寝てることに気が付いたとき、その可能性が頭をよぎったけど……もしかしてまじでこいつ、ゲイ? だから俺、裸なのか?

 思わず身をよじると、中辻さんはいっそう俺を抱きしめる腕に力を込める。


「あー、何もしてないから大丈夫だよー。スーツがシワになったらアレかなって思って脱がしただけだし」


 あぁ、なるほど。ならよかった……


「でもなんでそんなに張り付いてくるんですか?」


「え? それはー、気分」


 気分てなんだよ。ちょっとげんなりしつつ、俺は辺りを見回す。そういえば俺のスーツ、どこだろう?


「なあ、俺のスーツや荷物は?」


「あぁ、それならちゃんと、あそこのポールハンガーにかけてあるよ」


 と言い、彼は俺から離れていく。

 俺は起き上がり、きれいにかけてあるスーツのジャケットのポケットからスマホを取り出した。

 あ、なんかメッセージきてる。

 ロックを解除して確認すると、同じアパートに住んでいる同僚からだった。


『お前、退職したんだって? なあアパート、すぐ引き払えって、人事部長カンカンだったんだけど?』


『すぐ出ていかないなら荷物、勝手に処分するとか言ってたけど、お前、大丈夫かよ?』


 て、まじかよ?

 そんなん許されるのか?

 やべえ、どうしよう……そこまで考えてなかった。

 住むところ……住むところ……


「あんた、ほんと、表情ころころ変わるなあ。なんかあったの?」


 なんて言って、中辻さんは後ろから抱きついてくる。

 ほんっと距離感おかしいな、この人。


「え? あぁ、俺が住んでるアパート、会社所有ので、今すぐ出ていかないと荷物処分するって言われて……」


 そんな事言われても困るぞ。

 家、どうするよ?

 とりあえず実家に帰る? 親に連絡しないとだしなあ……

 そんな急で引越し業者、見つかるか?

 ごちゃごちゃと考えてると、


「じゃあうちに来れば?」


 なんて言い出すやつがいた。


「…………は?」


 何言われたのか理解できず、俺は後ろを振り返る。


「うち、部屋余ってるからうちくればいいじゃん」


「な、なんで……」


「困ってるんでしょ?」


「いや、まあそうだけど……」


「じゃあいいじゃん。俺、あんたに興味ある」


 いいじゃん、じゃねぇよ。

 それに興味ってなんだよどういう意味だよ?

 混乱して出てきた言葉は関係ない言葉だった。


「で、でも俺、無職……」


 違う、そうじゃないだろ俺、もっと重要なことあるだろうに、真っ先に出てきたのは金の心配だった。


「いいよべつに。そこまでお金、こまってないし。ちょうどいい相手が欲しかったんだよねー。きっとあんたにも俺が必要になるはずだよ」


 なんて言って、彼は笑う。


「でも、俺ができることない……」


「あるよ」


 と言い、中辻さんはにこっと笑った。


「一緒に寝るの」


 その言葉を聞いて、俺の中で疑惑が確信へと変わった。

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