押しキャラの
その酒場は、マカ、ロカ、ミカが
普段は
「それじゃ改めて、カナデ。ようこそ【集結の絆】へ――乾杯ッ!」
俺は団長として乾杯の音頭を取り樽ジョッキを掲げた。
ちなみにジョッキの中身はただのブドウジュースだ。
この異世界では13歳から飲酒と喫煙がOKであり、以前のアルフレッドは12歳から飲酒していたようだが、俺は飲まないようにしている。
転生したばかりは悪役だけに、いつ寝首を掻かれるか心配だったからな。
今でも延長線って感じだ。
「皆、かたじけない。これからはパーティのため尽力いたそう」
カナデは照れながらジョッキに口をつける。
彼女も下戸であるらしい。
他、ガイゼンは酒を飲むと身体がむくんでしまうらしく鎧が着れなくなると言っていた。
パールは11歳だし、シャノンは聖職者なので当然ながら飲まない。
シズクも奴隷少女なので酒とは縁遠いときている。
唯一ピコだけがエール酒を
「ひっく。アルフ~、今夜はもう飛べないからお持ち帰りしてぇ~ん、ひっく」
「ああピコなら別に持って帰る分は容易いからいいぞ……けど宿では女子達と寝ろよな」
ピコの実年齢は原作でも非公表だが、シャノンが聞いた話だと結構な歳らしいのだが……。
てかお持ち帰り願望のある
◇◆◇
宴会が終わり、宿屋に戻る。
床に入った俺は奇妙な夢を見ていた。
真っ白で何も見えない空間でぽつんと立つ俺の前に、一匹の鳥が佇んでいる。
随分と間抜けな顔した青い鳥だ。
左右の目の焦点がズレており、どこを見ているのかわからない。
嘴は半分ほど開けられ、ポケ~っとしている。
まさしくアホみたいな鳥だと思った。
「――アホじゃないよ。私はこの異世界の神だ」
いきなり神と名乗った青い鳥。夢とはいえ喋れるのか?
てかこいつ、異世界の神を名乗るってことは――。
「ま、まさか……原作者の鳥巻八号か?」
「察しがいいね、流石だアルフレッド。いやユーザーネーム:社畜君と呼ぶべきかな?」
「……アルフレッドでいい。まさか原作者に会えるとは……この展開やばくね? メタネタになるんじゃないか? どういう繋がりかは知らんけど」
「やばくはないよ。だって夢だもん。夢に文句言っちゃキリがないだろ? そう言っても読解力なく書き込むアンチはいるけどね。てかキミもWEB版の感想欄でよく荒してくれたよね? 何度もブロックしてやろうかと思ったよ」
「あんたの作品がガバすぎるからだ。個人的な趣味で書いているなら文句など言わん。けど書籍化やコミック版として売りに出しているなら、もう少し考えてマシな感じに修正しろ。せめて戦闘描写をキンキンキーンで終わらせるのはやめろ!」
「……チッ、アルフレッド。私は別にキミと討論するために現れたんじゃないのだよ。まぁ基本、ムカつく読者はスルーする主義だがね。いちいち対応すんのダルいしストレスだから」
「最低だな。んでなんの用だ?」
「キミはこの世界をなんだと思っている?」
「いきなり直球だな……神と称するあんたが作った異世界だろ?」
「そっ。では私はなんだと思う?」
「知能デバフに侵されたガバ作家」
「……チッ、それは向こう側の世界での話だ。てかキミ、初対面相手に失礼じゃないのかね? まぁいい……この次元はね、様々な『並行世界』が存在するんだ。無論、キミの前世である世界も同様であり、この異世界も私が管理する並行世界だ」
「何を言っているんだ? 要はあんたの空想世界って意味だろ?」
「半分は正解だが半分は間違っている。では何故、キミが社畜として過ごしていた前世に私が書いた作品が存在したのか考えてみたまえ」
「……そりゃ、なんでだ?」
「ぶちゃけると、あの世界に今の私は実在しない。キミの過ごしていた時代で生きる一人の人間に
「つまり実在する並行世界……そう捉えていいのか?」
俺の問いに鳥巻八号はアホ面で頷く。
仕組みは謎だが、こいつが創る並行世界(異世界)とやらは転生前の世界(地球)を主軸にリンクする形で繋がっているらしい。
そこで読者達の想念を集め、鳥巻が創造する異世界を形成しているのだとか。
言わばこの世界は、読者という信者達の力で実体化した並行世界――。
だからか?
やたら読者ウケを狙う舞台装置と
「――そこでアルフレッド、キミは疑問に思う筈だ。なんで自分が悪役のアルフレッドに転生したのだろうとね」
「まぁな。そしてどうして俺なんだって思っている」
「実は私にもわからない。ただ波長が合ったとしか言えないんだ」
「いつものガバか?」
「そう捉えてもらっていいよ。ただしガバとも言い切れない部分もある」
「どういう意味だ?」
「本当はアルフレッドじゃなく、
「ローグだと!?」
「ああ、それがどういうわけかアルフレッドに転生され、気づけばキミとなっていた。言っとくけど憑依じゃない。紛れもない転生だ。ただし、ある程度の年齢に達したら、前世の記憶と人格が戻るよう調整してある。そこは神様たる私の特権だ」
「なんのために?」
「――
「……デウス・エクス・マキナ? つまり悪役らしく滅ぼせってことか」
「違う。例えるなら物語の軌道修正さ……今はそれしか説明できない」
「んで、どうしてあんたが俺に接触してくる? 意図は?」
「本当はローグに頼む予定だったんだ……けど今はキミがローグだ」
「俺はアルフレッド。ローグじゃない」
「主人公って意味だ。現にあのバカは聖剣が抜けなかったろ? つまり主人公補正の資格を失効され、ただのイキリざまぁ役に降格したってことになる」
「聖剣を所持した俺が主人公だというのか?」
「そういうことになる。キミのせいで、すっかり私のシナリオが破綻されたが仕方ないと割り切っている」
「悪かったな……んで俺に何をさせたいんだ?」
「今のままでいい。原作知識を活かして、キミの思うように動いてくれ。そうすれば、必ずムーブが発生する」
「ムーブだと?」
「今はまだ詳細を説明できない。その時に再びこうして説明しよう。ちなみにキミに原作のローグみたいな主人公補正と
なるほど、つまりローグも原作のような奴が中心でムーブする
だからか? 王族へのタメ口とか身勝手な振る舞いや言動に対して度々注意を受けていたのは?
しかし俺は鳥巻がどうも信用できん。
いや普通にできねーよ。
たとえ神様でもな……てか神の癖に杜撰すぎんじゃね?
「言っておくが、俺はあんたの思惑通りに動くとは限らないぞ。いくら神だろうと、俺の意に反するようなら徹底して抗うつもりだ」
「結構、きっとキミが選ばれた理由はその意志の強さなのかもしれないね――ではそろそろ終わりにしよう」
「あと最後に一つ教えてくれ」
「なんだね?」
「鳥巻八号のペンネーム、どういう意味だ?」
「この姿が全てだ。鳥は私の象徴なのだよ。それと八を数値にして横にするとインフィニティ――無限大の神という意味さ」
ちゃんと意味があったのか……てっきり適当かと思ったわ。
◇◆◇
そうして俺は目を覚ました。
「……奇妙な夢だ。本当か嘘か知らんけど」
などと思っていると。
「う、うん……ご主人様ぁ、おはようございますぅ」
「アルフぅ、浮気は駄目だからねぇ、ん」
いつの間にかシズクが俺のベッドに入り込み、ピコが胸の上で寝ていた。
「こ、このヒロインズめ……」
この子らだけは、どうしようもないと思うのだった。