ライラは深いため息をついた。立派な巨乳が組んだままの腕の上に鎮座している。
「臆病なのに、大義は譲れないのね」
「臆病なのは、なんとか克服しようとしているよ」
エドワードがこんなに立派なヤツだったとは知らなかった。だけど、ライラのエロさに脳内が支配されて、それがスッと入ってこない。エドワードは立派な生足。エドワードドーンと巨乳。ああ、ダメだ。
俺たちはライラに別れを告げて、修道院を出た。後ろ髪引かれる思いだったのはウルリックとベンも同じだったようで、ライラがドアを閉めようとすると「ああ」とか「うう」とか言って「何か?」とまた開けさせて、それではまた…ということを何度も繰り返した。
頭がおかしいのか?
俺もライラを目に焼き付けたいと思っていたから、いいけど。
近くの公園に行って、ベンチに腰掛けた。
腰掛けたのはベンとウルリックとエドワードの3人だ。大体、ベンチというのは3人掛けで、18歳の野郎が4人も座れるようにはできていない。大柄なベンが座るとベンチが小さく見える。細身のウルリックと小柄なエドワードだから座れるが、彼らがもう少し大きければ、3人掛けはできないだろう。
俺もなんだかドッと疲れが出て座りたい気分だった。3人がそそくさと座ってしまったので、仕方がなく立ったまま所在なさげに腕を組んだ。
「エドワード、そうしょんぼりするな。俺たちのパーティーにいれば安泰だ。俺たちは子供みたいな外見でも、お前を見捨てない」
ベンがリーダーっぽいことを言っている。そりゃそうだろう。エドワードは腕のいい僧侶だ。今まで気持ちの悪い外見がネックだったが、本来がこういう…なんというか、可憐な感じの…何を言っているんだ…ゴホン。とにかく、気持ちの悪くない少年なのなら、全く問題はない。
こんなにテキパキと処理してくれる僧侶にまた出会えるかどうかわからないし、パーティーにはぜひいてほしい。何よりエドワードと縁が切れてしまったら、ライラに会いに行く口実がなくなってしまう。
「だけど、みんなはパーティーに女子がいないと、ヤル気が起きないんだろ? 僕はできれば早くレベルを上げて、城壁外を自由に探索できるくらいの冒険者になりたいんだ」
エドワードは痛いところを突いた。いや、俺も本来はそうだ。本来はそうなんだけど、やっぱりパーティーに女子がいた方がいい。その方が楽しいに決まっている。だけど、ジェシカのアドバイスに従うなら、複数人の女子が必要だ。俺は、ジェシカから聞いた話をみんなにした。
「その理論で行くならば、5人も女子が必要じゃないか!」
ウルリックは頭の後ろで腕を組むと、ベンチの背にもたれかかってうめいた。
そうだ。喧嘩にならないようにするには、男子より女子を多くしないといけない。それなら少なくとも、男子が女子を奪い合ってギスギスすることはない。逆に女子が男子を奪い合って、ギスギスするかもしれないけど。
「5人、5人か…」
ベンは遠い目をした。遠い目をしているだけで、何も考えてないだろう。1人でもこんなに苦労しているのに、5人も女子を新加入させるなんて、至難の業だ。
「いや、待て。ちょっと待てよ」
ウルリックがポンと手を叩いた。よく、いいアイデアを思いついた時に「ポンと手を叩く」という表現を使うが、実際にそれをやっているヤツは見たことがない。なのに今、目の前でそれをやっているヤツがいる。
「男子より女子が多ければいいんだろ?」
何か思いついたのか、エドワードを見つめながら、パッと表情を明るくした。
「俺とエドワードが女子になったらいいんじゃね? ああ、いっそのこと、みんな女子になったらいいじゃないか?!」
何を言っているんだ。意味がわかんねえ。