次の日から3日間、俺たちはアルバイトに精を出した。
こんなことをしている暇があれば、簡単なクエストをもらってきてクリアしてはどうか?という根本的な問いかけをするヤツは、誰もいなかった。浮かれていた。
馬車に乗ってヘイシュリグに行く。そこでエドワードの知り合いの女子に会って、パーティーに参加してもらうんだ。それぞれが頭の中で、妄想を膨らませていた。キモオタの知り合いなのに、勝手にベロニカ級のいい女が登場すると思い込んでいた。
馬車に乗り、乗り継ぎの街では公園で寝泊まりして節約し、3日目にヘイシュリグに到着した。
南の方にあって、展望も開けていて明るい雰囲気のポポナと比べると、ヘイシュリグは何もかもが暗い感じだ。建物の壁は全て灰色だし、街のすぐそばまで森が迫ってきていて、展望もクソもない。
何より寒い。3日程度の旅ではあったが、自分たちが北に向かって移動したことを一番、思い知ったのはポポナよりも随分と寒いことだった。
「ああ、寒い。で、どこに行くんだ?」
ウルリックはフードを首元にかき寄せながら言った。俺もバックパックから上着を出して着た。さらにタオルをマフラーのようにして、首元にも巻いた。ベンは半袖シャツのままだ。寒くないのか、こいつ。
「あああ、あっち。し、修道院」
エドワードは行く先を指差すと先頭に立って歩き出した。太っていて首が短いので、後ろ姿はずんぐりとして亀のようだ。短い足をせわしなく動かして歩く姿は、申し訳ないけど醜いと思った。
曲がりくねった石畳の道を歩いて行くと、広場に出た。向こうに3階建てで、とんがり屋根の大きな建物がある。3階の窓の周囲には手の込んだ装飾が施されていて、見るからに宗教施設という感じだ。
「こ、ここ」
エドワードに率いられて、俺たちは広場を横切ると、巨人でも入るのかと思うような大きな門をくぐって、建物の中に入った。
そこは礼拝堂だった。奥に神殿があって、ずらりと長椅子が並んでいる。神殿の前には机と椅子があって、何人かの修道士が作業をしていた。何か書いているようだ。
エドワードはここを知っているのか、ためらう様子もなく奥に向かって進んでいく。机の周りで立ち止まる。誰か探している。そして再び歩き出すと、机に向かって書き物をしていた一人の修道女に声をかけた。
「ライラ」
呼ばれた修道女が顔を上げた。
お、美人だ。
美人というか、かわいい。美少女といった方がいいかもしれない。
丸顔に黒目がちな瞳、小さな鼻と程よく厚い唇。ウィンプルと呼ばれる頭巾をかぶっているので、ヘアスタイルは見えない。だけど、うつむいて仕事をしていたせいか、きれいな黒い前髪が頭巾からはみ出していた。
修道女のユニホームであるゆったりとしたワンピースを着ているが、座っているのでヒップラインが浮き出ていて、ボリュームがあるのがよくわかる。これだけケツがデカければ、おっぱいも大きいに違いない。聖なる場所でもそういうことを目ざとく判断する俺は、やはり男子なんだなと思う。
「エドワード」
ライラは少し怒ったような顔をすると、立ち上がった。おお、やはり巨乳だ。ワンピースを下から突き上げるおっぱいは、ベロニカ級とまでは言わないが、それに次ぐデカさだった。
なんでこんな美女と、こんなキモオタが知り合いなんだ。許さないぞ。
「ライラ、実は話があっで…」
「わかったから。こっちに来なさい」
ライラは俺たちを、神殿横から奥に入った小部屋に招き入れた。
何か作業をするところらしい。小さなテーブルと椅子が何脚か。無造作に置いてある。小さな窓があって、昼下がりの日差しが入ってきていた。
「ライラ…」
エドワードが何か言いかけている最中にライラは突然、スカートをまくり上げた。真っ白な太ももがまぶしすぎる。下着が見えるんじゃないかと興奮していたら、黒いショートパンツを履いていた。
なんだ、残念…。
腰の後ろに手を突っ込むと、隠し持っていたものを取り出した。
ムチだった。
そう。漢字で書けば鞭。ファンタジーの世界ではウィップという。馬とか猛獣とかを追う時に使う、あれね。女王様の必須アイテムと言った方が、よくわかるかもしれない。
ライラはものも言わず、いきなりエドワードを鞭打った。
ピュンとしなって、ビシイッとエドワードの肉にめり込む音が部屋中に響き渡る。2発、3発。エドワードはハアハアとあえぎ声を上げながら、その場に倒れた。俺たちは呆気に取られて、突然始まった謎のプレーをただ見ていることしかできなかった。
「何度も何度も言ったのに! また! こんなつまらないことをして! いい加減にしなさい! あなたという人は! この臆病者が!」
ライラは額に汗を浮かべながら、エドワードを鞭打った。
鞭を振るうたびにおっぱいがゆさゆさと揺れる。エロい。エロすぎる。いつまでもこの情景を見ていたい。最初は少し引いたが、気が付けば食い入るようにライラを見つめていた。だから、エドワードの変化に気づかなかった。
ライラの手が止まる。「ふう」と息をつき、額の汗を拭った。