「はい、それでは、先日のコラボが有耶無耶のうちに中止になってしまったので、改めましてのコラボになります。本日のゲストは日置ササルさんです!」
「よろしくどうぞ〜。」
「え?あたしはゲストじゃないの?」
「ちょこさんはなんていうか……、パートナー?ゲストではないというか……。」
「ま、まあ、あんたがそういうなら?それでもいいけど?」
ツンを発動させながら獄寺ちょこが言う。
先日松戸ダンジョンでのコラボの予定は、生まれたてのダンジョンに、既存のダンジョンが統合されてしまうという事件により、なくなってしまった為、今日は美織のチャンネルで改めてコラボをすることになった。
:嬉しいくせに
:安定のツンデレ
:もはや様式美
:女2人とリアコラボしてんのに、歓迎されてる日置にジワる
:今日はセクハラ封印ってマジか
:日置のセクハラ期待
イケメンのガワをかぶっている為、当然女性ファンも多いが、それ以上にネットの玩具として、男性リスナーのファンが多いのが日置ササルの特徴だ。
日頃女性配信者のいるコラボに呼ばれても、特に問題を起こしたことがないことと、リスナーの代わりに女性配信者にセクハラしてくれるというのが主な理由でもある。
「今日はこの先予定している討伐に必要な、魔力操作を念の為高めておきたいということで、ここ、ファンタジーゾーンに来ています!とっても可愛いですよね!」
そう言って、美織が背景を配信画面全面に映し出す。通称ファンタジーゾーン、豊島園ダンジョンの深層に位置するここは、歩くキノコや妖精などが飛び交うエリアである。
当然すべて魔物だ。ここの魔物たちには特徴があり、魔力を極限まで濃縮して抑え込むと、仲間と判断して寄って来るのである。
遊園地にでもいそうなファンタジーな魔物たちが、たくさん配信画面におさまるという光景は、撮れ高が素晴らしいと、倒すよりも配信に映したいという配信者が多い。
美織も一度は来てみたかったのだ。今日はここでお茶会をしつつ、魔力操作の練度を高める訓練をする耐久配信の予定だった。
それぞれ持ち寄ったテーブルに椅子、テーブルクロスや茶器セットなどを、ダンジョンの草むらの上にセッティングしていく。
見た目重視でイギリス式のアフタヌーンティーセットである。美織と獄寺ちょこがお嬢さま設定で、日置ササルは執事役だ。
これは実際に執事喫茶でのアルバイト経験のある、日置ササルの提案である。今日はセクハラは封印するらしい。面白そうだったので美織たちもノリノリだ。
「いおりお嬢さま、ちょこお嬢さま、久し振りのご帰宅嬉しく思います。」
「そうね、久し振りに実家でくつろぎたくて。ササルも元気にしていたかしら?」
エセお嬢さまのつもりで髪をかきあげながら、執事役の日置ササルに話しかける獄寺ちょこ。
「はい、お帰りをお待ちしながら、誠心誠意つとめさせていただいておりました。」
執事の時はちゃんと標準語を話すらしい日置ササルが、ニッコリと微笑む。
:ノリノリである
:ちょこタンちゃんとお嬢さましとるw
:ケーキ美味そうだな
「いおりお嬢さま、本日の紅茶はいかが致しましょうか。」
「そうね、オススメはなにかしら?」
「本日はバタフライピーをご用意いたしております。」
「じゃあ、それにしようかしら。」
「私もそうするわ。」
「かしこまりました。」
日置ササルが優雅な仕草で紅茶を注いでくれる。配信には映らないにも関わらず、しっかり執事服まで身に着けていた。
美織と獄寺ちょこが1番下のサンドイッチに手を伸ばす。イギリス式のアフタヌーンティーは、1番下の段から取るのがマナーだと、日置ササルが事前に教えてくれた。
:意外過ぎるwww
:ちゃんと執事しとるw
:綺麗な日置www
:妖精めっちゃ集まってきとるw
全員魔力を濃縮して抑え込んでいるので、周囲を妖精が飛び交い、ティーカップを持つ美織の指先に止まった。
獄寺ちょこの足元に、可愛らしい歩くキノコが近付き、そっと椅子の足に手を添えて見上げてくる。獄寺ちょこはそれを見て、ちょっと頬をひくつかせた。
見た目が可愛らしいとはいえ、深層の魔物だ。気を抜けばいつでも攻撃してくるのだ。
だが美織は楽しそうに妖精の頭を撫でたりしていた。
「あなたもなかなかね。」
「恐縮です。」
魔力のコントロールを造作もなくやってのける日置ササルに、素直に感心しながら獄寺ちょこが褒めると、日置ササルがニコッと微笑んだ。かなり余裕そうである。
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