恐怖で固まる親子。母親はしゃがんで娘を腕の中に抱きしめることしか出来なかった。幼い少女は恐怖で泣き叫び、それがゴブリンたちの興味をそそった。
一斉に飛びかかるゴブリンを一閃するガイル・ジャスティス。だが一瞬怯んだものの、まだまだ数はたくさんいた。
「ここは俺に任せろ!早く子どもを連れて逃げるんだ!」
「は……はい……。」
だが腰が抜けたのか、母親は立ち上がることが出来ないでいた。彼らが逃げるまで時間を稼がなくてはならない。
地上に出て来た他の探索者たちは、避難誘導や車を止める作業に没頭し、こちらに手を貸す余裕がなかった。
何も知らずに突っ込んでくる車がいたら、それこそ大惨事につながる。ここはデパートや映画館などが集まる繁華街なのだ。
警察が到着して交通整理を始めるまでの間は、それが出来るのは探索者たちだけだ。コブリンくらいなら自分でもなんとかなる。
だが後ろを気にして戦ったことはない。誰かを守りながら戦うというのは、こんなにも集中出来ないものなのだと知った。
後ろに気を取られながらも、慎重に1体ずつ倒していく。ようやく動けるようになったのか、母親が立ち上がり、子どもを連れて逃げ出そうとしているのが視界の端に見えた。
ちらりとそちらを振り返り、思わずホッとした瞬間だった。笛の音のような声が響き、ガイル・ジャスティスは前を振り返った。
ゴブリンの後ろにハウリングホイッスルがいた。巨大な鳥の姿をした下層の魔物。その怪音による衝撃波を放って攻撃をする。
自分には防ぐことは出来ない。ガイル・ジャスティスは思わず親子をかばうように両手を広げて盾になった。
衝撃波をまともに受けたガイル・ジャスティスは、グラリ……とその場に突っ伏した。
「だいじょうぶですか!?」
逃げようとしていた母親が叫ぶ。
「早く……逃げるんだ……。」
再び衝撃波を放とうとするハウリングホイッスルに、ガイル・ジャスティスは無理やり体を起こして、再び両手を広げた。
「早く逃げて下さい!勝てない相手に挑んだら、死んでしまいます!」
母親の叫ぶ声に、ニヤリと笑うガイル・ジャスティス。
「……勝てるから挑むんじゃない。守りたい相手がいるから戦う。
それが正義のヒーローなんだ!」
ガイル・ジャスティスは一歩も引くつもりはなかった。
その頃美織たちは、新しく出来たダンジョンの構造の証拠映像を兼ねて、配信を開始しつつ、ダンジョン内を上へと上がっていた。
「ダンジョンが生まれるから魔物が生まれるって言うのがよくわかるわね。何もいないダンジョンなんて初めてよ。」
獄寺ちょこはそう言いつつ、ダンジョンの中を進んでいく。
「魔物がダンジョンで生まれて、死ねば人間すらダンジョンに吸収される。ダンジョンてなんなんじゃろ。」
日置ササルもそう呟いた。
「……そのセリフがフラグになったのかわかりませんが、お出ましのようですよ。」
美織がそう視線を向けた先には、ランダムピエロたちがいた。
他の魔物からはドロップされることがない、変わったアイテムをドロップするということ、また必ず決まった場所に出るわけでもないことから、つけられた名前だ。
本来ボスがランダム出現なことはあるが、階層ごとの魔物は特定のダンジョンに決まった魔物が存在する。そこに突然現れる為、当初はイレギュラーかのように扱われていた。
その見た目にまったく関係のないアイテムをドロップすることが多い。それが有用な品であることが多い為、見つけた場合優先的に倒すように推奨されてもいる。
魔道具そのものをドロップすることもあり、レベル鑑定の為の魔道具のもとになった魔道具も、ランダムピエロのドロップ品のひとつだった。
異質な存在として専門家による研究がすすめられているが、未だにその原因が解明されたことはない。
敵にデバフをかける青のピエロ、味方にバフをかける赤のピエロ、攻撃の中心になる紫のピエロの、最低3種類で攻撃をしてくる。
面倒なのはボス部屋に彼らがいた場合だ。ボスにバフをかけ、味方にデバフをかけてくる為、難易度が数倍に跳ね上がるのだ。
「ここにボスはいないわ。それなら大したことないわね。あいつらだけなら、私でも倒せるもの。」
獄寺ちょこが爆弾を取り出して構える。
「俺の分も残しちょいて!」
日置ササルがアイテムバッグから槍を取り出した。
動き出した獄寺ちょこと日置ササルにデバフをかけるランダムピエロ。2人の動きに気を取られている背後から、目にも止まらぬ速度で美織が飛び出した。
──横一線!美織がランダムピエロたちを薙ぎ払った。すると配信画面に、
【確定プレゼントアンケート。
1.巨大ロボ・ジャスティカイザー(50.0%)
2.巨大発射装置・ジャスティランチャー(50.0%)】
と表示されていたのだった。
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