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第125話 駆けつけた人物

 吹雪が強くなり、それが鞭のようにしなると、捜索隊の体に巻き付いていく。

「ぐあああああああっ!!」

 それが彼らの体を締め上げていく。


 盾使いがかばう後ろで、魔法使いたちが魔法をためて放つ。近接職組がハンマーや剣をマジックバッグから取り出し、仲間を縛り上げている吹雪の鞭に攻撃するが、まったく攻撃が通らない。


 スノープリンセスには魔法以外の攻撃が通りにくいのだ。だがAランク冒険者の魔法も、吹雪によって軽くあしらわれてしまう。


「攻撃が通らない……!救難信号を上げろ!撤退するんだ!こいつには勝てない!やられた奴らは諦めろ!」

 権藤が叫ぶ。


 その時雪明かりに反射した光が斜め十字に重なるように光る。切り裂かれた吹雪の鞭から救助隊が取り落とされる。


 美織が祈りの指輪をつけた手を空中に差し伸べると、そこから光を放って、負傷した救助隊の体を癒やしていく。


「傷が……治っていく……。」

 驚いたように自分の体を見つめる救助隊。

「あなたの相手は私です。」

 美織はスノープリンセスを見据えた。


 吹雪の鞭が美織を襲う。それを避けつつ、そのうちのいくつかを切り裂いて進んでいく。

「あれを切れるのか!?」

「近接攻撃には耐性がある筈だぞ!?」


 吹雪の鞭がきかないとみるや、スノープリンセスは大量の円錐形の氷柱を放ってきた。地面に片手をついて回転してスライディングするようにそれをさけ、目の前に飛んできた氷柱を切り裂く。


 放射状に広がっていた氷柱が、美織1点に目がけて放たれる。それを切り裂いて進んでいくが、連続過ぎて足止めをくらう。


 撃ち落とすのを諦めて飛び退き、氷柱の横を走って進むと、スノープリンセスはその後ろの救助隊を攻撃してきた。


「うわあああっ!?」

 武器を氷柱に向けながら悲鳴を上げる救助隊の一員。


 美織は素早く振り返り、連続して飛ぶ氷柱を撃ち落とすが、救助隊を守りながらになる為、前へと進むことが出来ないでいた。


「あれをほぼ一撃で……。高坂……、これがお前の娘か……。」

 救助隊を助け出して、その場から立ち去らせながら、権藤は呟いた。


「俺たちが足手まといに……。」

「クソッ!これが“異界の門”か……!

 こんな平場にいきなりこんな強い魔物が現れるなんて!」


 階層になっているダンジョンとは異なり、基本“異界の門”はひとつのフィールドしか存在しない。その為どの程度の魔物がいるのかは、入ってみるまでわからないのだ。


「救難信号を出したから、すぐにみんな集まってくる筈だ。Aランク以上が40人もいれば、物の数じゃない!それまで持ちこたえるんだ!」


 権藤が指示を飛ばす。だが近くにいたチームが何組か集まって来たものの、攻撃を防ぐだけで手一杯だった。Aランク数名の護衛のもと、救助隊がなんとか後ろに下がる。


 なんとかスノープリンセスの射程範囲外から出ることが出来た救助隊は、突き刺さる氷柱と吹雪の鞭の同時攻撃を避けながら、たった1人奮闘する少女を眺めていることしか出来なかった。


「やつの気を散らせ!少しでもこちらに惹きつけるんだ!」

 権藤の言葉にAランク冒険者たちが、吹雪の鞭と氷柱の攻撃を受け止めながら、周囲に散開する。


 あちこちで動き回る彼らに気を取られて、美織にだけ注視出来なくなったことで、美織は少しずつ距離を縮めていった。


 大上段から切り下ろそうとした美織を、スノープリンセスが抱きしめ、凍てつく吐息を吹きかけた。


「くっ……!」

 スノープリンセスを突き刺して、その抱擁から飛び退く美織の顔半分と、上半身が肩まで凍りついてしまう。


 <超回復>ですぐに回復し、再び斬りかかる。吹雪の鞭と氷柱を同時に切り返す美織の攻撃は、最早Aランクの探索者たちにもその動きが見えないものとなっていた。


「早く逃げて下さい!ここは私が!」

「未成年を1人置いて行かれるか!」

 叫ぶ美織に、吹雪の鞭の相手をしながら権藤が叫ぶ。


「もうすぐ他のチームも合流する!それまで持ちこたえれば俺たちの勝ちだ!」

「……そううまくはいかないみたいですよ。」


 再び吹雪がとぐろを巻いたかと思うと、新たなスノープリンセスが4体も現れたのだ。

 吹雪の鞭に、他の場所に行っていた探索者たちをぶら下げて。


 表情などほぼない筈の、能面のようなスノープリンセスたちの顔が、ニヤニヤと笑っているかのように見えた。

「……なんてこった。くそったれ。」


 権藤は歯噛みしながら思わずそう悪態をついた。1体でも美織がいることでなんとか持ちこたえているというのに、4体も現れてしまっては勝てる見込みがなかった。


「……連舞咲き。」

「ギャアアアアアアアアアア!」

 そこに後ろからスノープリンセスを切り裂いた人間がいた。


 魔核を傷つけられなかった為、すぐに吹雪の姿となって逃げ、再び姿を形作ったが、初めてスノープリンセスにダメージを与えた人間が現れたのだ。


「珍しく人の魔力を感じると思ったら、随分と懐かしい顔がいるな。」

「お前……まさか、高坂か!?」


 油断なく双剣を構えた人物が、ギラリと目を光らせてこちらを見ている。美織はキョトンとしながらその人物を眺めていた。


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