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第60話 狙われる美織

 美織が深層に獄寺ちょこを迎えに行くと、ドローンの映像を見守っていたシャーロットが、いきなり美織に飛びついた。


「パパを助けてくれてありがとう!いおり!いおりならやってくれると思ってたわ!」

「連絡をくれてよかったです。すぐに助けに行かれる場所だったのでなんとかなりました。怖かったでしょう?シャーロットちゃん。」


 そう言ってシャーロットの頭を撫でる美織に、シャーロットは嬉しそうに微笑んだ。

「アリガト。イオリ。」


 そこにメイソン・オーシャンがやって来て、片言の日本語でお礼を言った。

「日本語わかるんですか?」

「スコシ。」


「パパは私ほど日本語がうまくないの。」

「剣呑寺いおりさん、東京支社より連絡が入っています。お話いただけますか?」


 そこに、USHCのサポート部隊の1人がやってきて、スマホを差し出してくる。

「はい、代わりました、剣呑寺です。」


 スマホを耳に当てて電話に出ると、

「コンニチワ、イオリ。アスター・ヒックスデス。」

 と、これまた片言の日本語が聞こえてきた。アスター・ヒックス……?と、聞き覚えのある名前に首を傾げる美織だったが、USHCの偉い人だった!ということに思い至り、慌ててスマホを取り落としそうになる。


「は、はじめまして!剣呑寺いおりです!」

「ドモ、ドモ。イオリ、イノリノユビワ、ドロップシマシタネ?ソレ、トテモメズラシイデス。ユズッテホシイデス。オネガイデキマスカ?」


「あ、え〜と……。なんか他の人に譲れない仕様みたいで……。ごめんなさい。祈りの指環は売れないんです。」


「ソウナノデスカ?ナラセメテ、ドノヨウナコウカカ、オシエテモラッテモ?シャナイノデータベース、コウシンシタイデス。」


「あ、聖女と同じ力が使えるってことでした。リザレクトも使えるとかで……!」

「スゴイ!ソレユズッテモラエナイノ、ザンネンデス。」


「ごめんなさい、譲れる仕様なら、検討もしたんですけど……。」

 そのやり取りが、まだ配信中だったUSHCのチャンネルに流れていた。


:聖女の力を発揮する指環だと!?

:そんなの聞いたことないぞ!

:とんでもねえ能力だな

:代わりに人に譲れないのか

:譲れたらもう、探索者なんてしなくても、御殿に住めるレベルだろうな

:リザレクトが使えるってだけでも、探索のすすみにくいアンデット系のダンジョンで大活躍だからな、どの企業もギルドも、喉から手が出る程欲しいだろうな

:ほんとに譲れないのかな?嫌だからそう言ってるだけだったり?


 コメント欄でもそう疑問が出たように、本当に譲れないわけではないのではないかと考える人間は多かった。占有タイプのドロップ品は存在するが、かなりその数は少ない。


 また占有タイプのドロップ品ほど、性能のよい物が多い為、性能を考えれば占有タイプの可能性が高いと考える者も多くいたが、占有タイプのそもそもの数が少ない為、占有タイプではない可能性を期待する者のほうが、もっと大勢いたのだ。


 美織がアンケートの妖精と会話をしているシーンの声は配信にのっていなかった為、なおのことなのだろう。


 だが、もしそれが配信にのっていたとしても、一部の人間はそれでもなお、本当に譲れないのか自分の目で確認をし、試してみるまで納得出来ないと思っていた。


 それほどまでに、リザレクトを使えるということ、持つだけで聖女と同じ力を使えるという、祈りの指環の能力は魅力的過ぎた。


 聖魔法使いが元々少ないという事実。また聖魔法使いであっても、リザレクトは上位の魔法に相当する為、レベルが高くないと使うことの出来ない魔法だ。


 リザレクトの使える聖魔法使いがいないと潜ることの難しいダンジョンでは、高価なアイテムが多数ドロップする。


 ダンジョン先進国では、他国から高額で引き抜いてでも、必ず聖魔法使いを用意して、アンデットが徘徊するダンジョンに潜っているのだ。企業も、ギルドも、それこそ国レベルで総資産額が変わる。それがリザレクトの使える聖魔法使いという存在だった。


 この頃既に、ダンVtuber剣呑寺いおりの正体を探るべく、多くの人間が動き出していた。その中の1人は、USHCの社員につてを持っており、その社員は今まさに、サポート部隊の中に潜んでいた。


 サポート部隊の男のスマホが振動し、画面を見ると、トークアプリ上に、剣呑寺いおりの後をつけて家を突き止めろ、と書かれていた。それに了解、と返信を返す男。スマホをポケットにしまい、美織から目を離さないように、じっと観察を始めた。


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