「──え?なんでこんな、家の近くのダンジョンに来たの?」
獄寺ちょこは、急遽配信を切って銀座ダンジョンに向かうことになり、急いでいる筈の美織が、近所のダンジョンに潜り始めた為、ついてきたものの困惑を隠せなかった。
「急いでいるからですよ?」
ずんずんと奥に進んでいく美織の後をついて歩きながら、獄寺ちょこは首をかしげる。
「え?どゆこと?」
「──ダンジョンっていうのは、どこかでつながっていることも多いものなんです。銀座ダンジョンの深淵と、奈落がつながったのもその為です。他のダンジョンの奈落と、銀座ダンジョンの深淵がつながったんですよ。そこから魔物が入ってきたんです。」
「ここのダンジョンも、銀座ダンジョンとつながってるってこと?」
「そういうことになりますね。もちろん、常時つながってるわけじゃありませんよ?時折そういうことがあるってことですね。」
「初めて知ったわよ、そんな事実……。」
「ショートカットするのには便利ですけど、イレギュラー発生の原因にもなるので、あまり歓迎出来ないかも知れないですねえ。」
「イレギュラーの原因ってそれなの!?」
「そうですよ?一時的につながったダンジョンから、魔物が流入してきているんです。そうじゃなきゃ、彼らはどこから来たんですか?」
「そ、そう言われると納得かも……。」
「──ここですね。」
美織は下層に降りると、足の裏で確かめるように、スリスリと地面を撫でている。
「なにやってんの?」
「つながる箇所を探しているんですよ。
──ありました!ちょこさん、捕まって下さい!強制転送魔法陣です!」」
「えっ?うえっ!?」
美織の足元に魔法陣が現れ、下から上に黄緑色の光がのびる。獄寺ちょこは美織の腰にギュッとしがみついて目を閉じた。
「ここを魔物が踏むから、強制的に別のダンジョンに転送されて来てたってこと?」
「そうなりますね!」
強制転送魔法陣が、美織と獄寺ちょこを銀座ダンジョンの深淵へと飛ばす。銀座ダンジョンの深淵の空中に現れた、美織とちょこ。それに気付いて驚くメイソン・オーシャン。
「ちょこさん!メイソン・オーシャンさんをお願いします!」
「りょーかい!」
獄寺ちょこが隠密で姿を消し、移動速度強化でメイソン・オーシャンをアンデッドアースドラゴンから遠ざける。
「メイソン・オーシャンさんはアンデッド化の真っ最中です!距離を取ったら、ちょこさんもメイソン・オーシャンさんから離れてください!危険ですので!」
「わ、わかった!」
獄寺ちょこはすぐにメイソン・オーシャンから離れると、隠密で姿を消したまま、様子を伺った。
メイソン・オーシャンのアンデッド化は、既に全身へと広がり、かじろうて首から上が残っている程度だ。上位探索者としての強い意思と力が、完全にアンデッド化することを拒んでいるのだろう。
「たりゃああああああああ!」
上空から落下しつつ、剣を振り下ろす美織。その切っ先は一撃でアンデッドアースドラゴンの核を切り裂いた。
ネクロマンサーがアンデッドアースドラゴンに手をかざし、再び起き上がらせようとしたが、核を失った体はドロリと崩れて、2度と形を取ることを許さなかった。
「──アンデッド化した魔物はリミッターが外れて、本来の2倍から3倍の力を出すと言う。そのアンデッドアースドラゴンを一撃で……!?あれは一体誰だ?」
「あれが会社が目をかけている、剣呑寺いおりさんです。」
「あれが……剣呑寺いおり……。」
深層でドローン越しに様子を伺っていたサポート部隊は、散々メイソン・オーシャンを苦しめてきたアンデッドアースドラゴンが一撃で葬られる様を呆然と見つめていた。
「な、なんだこれは!?」
「アンケート……?」
「誰だこんなものを打ち込んだのは。」
「いや、誰も触っていないぞ!?」
その頃、USHCの外部配信の画面には、誰も内容を打ち込んでいないにも関わらず、
【確定ドロップアンケート。
1.スキル定着スクロール(0.05%)
2.エリクサー(1.3%)】
と書かれたアンケートが、配信画面に表示されていたのだった。
:これ、まさかいおりんのスキル、<アンケート>のやつか?
:他人の配信にも出るもんなのか!?
:いおりんを……映してるから、とか?
:俺たちに、救えってことじゃね?
:メイソン・オーシャンをか?
:それか、いおりんをパワーアップさせて、ネクロマンサーを倒す手助けを出来るってことか?
:いくらいおりんと言えども、奈落の魔物にこのままで勝てるとは思えないな……
:メイソン・オーシャンの命か、いおりんのパワーアップか、俺たちが選ばないといけないのか!?
日頃美織の配信を見ているリスナーたちだけがそれに気が付いた。突然の究極の選択に混乱しつつも、アンケートのボタンを選択しないという考えは誰1人としてなかった。
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久々のアンケートです!さあ皆さま、どちらを選びますか?
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