メイソン・オーシャンは、すぐにマジックバッグからエターナルポーションを取り出して、右腕にぶちまけた。
死に際の人間すらも助けられるというエリクサー程でなくとも、千切れた腕をはやす程度の効果はある。すぐに腕は復活したが、双剣の片方は自分の右腕とともに、アンデッドアースドラゴンの口の中だ。
左手に持っていた双剣の片方を地面に放り投げると、マジックバッグから聖属性の双剣を新たに取り出して装備した。
「
メイソン・オーシャンは自分が戦うことで探索部隊を逃がそうと考えていた。だが。治したはずの右腕の痛みに気付く。
はやした腕のつなぎ目部分と思わしき場所から、腕が赤黒く変色していることに気付いた。そしてそれは瞬く間に右腕全体へと広がっていく。──感染している!!
メイソン・オーシャンは素早く右腕を根元から切り落とし、再びエターナルポーションを振りかけて右腕をはやした。
──だが、再びつなぎ目部分と思わしき場所から、赤黒く変色が広がっていく。
これを完全に解決するにはエリクサーが必要だったが、先日売ったばかりで、メイソン・オーシャンの手元にはなかった。
USHCはドローンのカメラ越しに、メイソン・オーシャンの異変に気が付き、すぐにエリクサーを手配しようとしたが、社内には在庫がなく、また問い合わせた国内企業のどこにもエリクサーがなかった。
アメリカ本社には在庫があったが、飛行機だけでも11時間はかかる。その間に完全にアンデッド化してしまうことだろう。
他の手段としては、アンデッドに対する浄化作用を持つ、リザレクトが使える聖魔法使いを手配する方法があるが、そもそも聖魔法使いの数は少なく、また日本にはレベルの高い聖魔法使いがいなかった。
「どうにも出来ないのか!?このままではメイソン・オーシャン氏が……!!」
「ですが、現存するエリクサーを手配するのも、聖魔法使いを手配するのも、同じだけの時間がかかります……!」
「クソッ!!アンデッドがいるとわかっていれば、事前に準備したものを!」
USHCの幹部はテーブルを拳で叩いた。それを眉間に皺を寄せ、腕組みしながら見ているアスター・ヒックス。
エイプがアンデッドだった時点で、他にもアンデッドがいる可能性や、アンデッド化させることの出来る魔物がいる可能性を考慮し、いったん調査のみにして引くべきであったのだ。だが出てきたボスが倒せそうなドラゴンであったことから、USHCも、探索部隊も、討伐することしか頭になかったのだ。
深層に引き上げた探索部隊は、サポート部隊とともにドローンの映像を見ていた。何も出来ない自分たちに歯噛みしつつ、アンデッド化していくメイソン・オーシャンを、ただ見守ることしか出来なかった。
:ちなみにカラスミはボラの卵から作られたものをさすから、それは厳密にはカラスミではないぞ。
:違うけど味と食感が似てる、カラスミの上位互換みたいなもん。
:カラスミも高級品だけど、それ以上の高級品てことか。
:それ自体に名前をつけるには、まだ歴史が浅すぎるんだよな。
その頃美織は獄寺ちょことともに、スターフィッシュツリーの卵巣食べ配信をおこなっていた。皇あかりに言われた通り、これから食べるものをカラスミだと紹介したところ、リスナーから指摘が入っていたところだ。
「そうなんですね、知りませんでした。それならスターフィッシュツリーの卵巣を乾燥したもの、になりますかね?」
「そうね、それでいいんじゃない?」
獄寺ちょこも同意し、さっそくスターフィッシュツリーの卵巣を乾燥させたものをひとかじりしてみる。
「なんかチーズのような風味ですね?初めて食べましたけど、とっても美味しいです。」
「……美味しい!なにこれ!カラスミの上位互換てのはマジだわ!」
カラスミ好きの獄寺ちょこは感動した。
「次はこれを試してみましょう。オススメの食べ方だそうです。」
と、薄くスライスした大根に、スターフィッシュツリーの卵巣を乾燥させたものを、切って挟んだものを食べてみる。
「〜〜〜!!」
獄寺ちょこは足をダンダンと地団駄を踏むようにジタバタさせて目をギュッとつぶる。
「美味しいですね!ちょこさん!」
「これヤバいわ!お茶漬けも楽しみね!」
「さっそくお茶漬けも食べましょう!」
熱々のご飯の上にネギを好きなだけ散らして、刻んだカラスミを散らし、塩少々を加えた熱々の昆布だし汁を注いで、お好みでワサビや海苔を添えて、お茶漬けの完成だ。それを写真にとってSNSサイトにアップした。
:見てるだけで腹が減る
:酒が飲みたくなってきた
:俺お茶漬け作ってくる
:俺は既にこの配信を見ながら飲んでいる
リスナーもめいめいに楽しんでいるようである。そこに美織のスマホが、トークアプリに連絡があったことの通知を知らせてくる。
Charlotte Ocean:
配信中でトークアプリを見られないと思ったのか、それとも余程焦ったのか、コメント欄にも、シャーロットからのコメントが入った。美織はトークアプリを開いて、シャーロットのメッセージを確認すると、
一言、
「
と言った。
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