「そういえば、いおりん、タイラントクラブの堅鋏、解体したから身肉がない状態のものが準備出来てるけど、これはどうするの?」
「普通に売りに出そうと思ってます。私、双剣は使わないので、素材が必要ないですし。」
「それなら、うちのギルドに売ってくれないかな?欲しがってる先輩いたんだよね。」
「いいですよ?他のギルドを通じて売ろうかと思ってましたから、ルカルカさんのところに直接売っても。」
「ありがと~!売りに出されたのを後から買うと、その分お高くなるからねえ。」
「あ~そうなんですねえ。」
美織はニコニコとそう言った。
自分の手元に残るお金に変化はないので、直接売ろうが他を通じて売ろうが、その後のことに感知はしておらず興味がなかった。
「そういえば、次の配信はどうするの?」
「そうですねえ、実際2回の食べ食べ配信でかなり伸びましたし、そちらの方向性を追求してみてもいいかなと思ってます。」
「確かに!いおりんの食べ配信、2回とも貴重なものばっかだったもんね!とすると、次に狙うのは何?」
「そうですねえ……。仙桃でもどうかなって思ってます。針の山の頂上に生えてて、上空にスカイフィッシュが飛んでるから、絵的にも面白いかな~って。」
ニコニコする美織に、
「せ、仙桃の生えてる針の山って……。狭山ダンジョンの深層のこと言ってる!?」
「はい、そうですね。」
「はいそうですねじゃないよ、いおりん!まさか深層にもソロで挑むつもり!?」
「はい、普段から潜ってますし。」
と美織はあっさりと言った。
「は!?本気であんた一人で行くつもり!?は~仕方ないわね、ついてってあげるわ!」
とドヤ顔で獄寺ちょこが言う。
「ついて来てくださるんですか?獄寺さん。お友だちと一緒なんて嬉しいです!」
美織は獄寺ちょこの手を握る。
ポッと頬を染めた獄寺ちょこは、
「ま、まあ!?あんた一人じゃ心配だし?深層ならあたしも潜ったことあるしね!」
と言いつつも獄寺ちょこの場合は、他の配信者の邪魔をしに行っただけの話なので、深層の魔物と戦ったことがあるわけではない。
深層の魔物から逃げおおせることが、スキルの関係上可能というだけだ。だから大手ギルドや大物配信者相手でも、深層まで追いかけて迷惑配信をすることが出来たのだ。
鳩胸みかり:仙桃!?ちょ、食べたい!
似鳥ゆえ:よこせください
アーリー・ダブクロス:ひとつ食べたら強靭な美肌を手に入れるというあの……!
満天星きらり:オフコラボ希望!オフコラボ希望!
灰崎イチカ:お金なら払うから!
瀬戸内ミリー:あたしミリーさん。今あなたの後ろにいるの
「ちょ、先輩方!?」
ルカルカがコメント欄に流れる名前を見て驚愕している。
「お知り合いですか?」
「うちのギルドの先輩たちだよ……。」
「ああ……。」
「仙桃ってね、みんなに説明するとね、食べると美肌が約束されるっていう、女子垂涎の食べ物なのね。それ自体は普通に木になってるものなんだけど、生えているところが魔物に守られた深層にあるから、普通の探索者には近づけないの。しかも仙桃をメインに取ってくる人なんて少ないから、結果として希少素材になってるんだよね。」
「依頼でもあれば別だろうけどね。マジックバッグに余裕があったら、深層の魔物の素材を入れたいから、仙桃を持って帰って来る探索者が少ないってわけ。」
ルカルカの言葉を獄寺ちょこが補足する。
「でも私も手に入るなら欲しい~!美肌になるだけじゃなく、肌が強靭になるから、防御力が上がるって言われてるんだよね!」
:なるほど、探索者としてもおにゃのことしても、欲しい食材なわけだ
:これはルカルカにもごちそうしないとな
そこに、コンコン、というドアをノックする音が聞こえる。配信中に誰?とルカルカが立ち上がりドアを開けると、ギルドの先輩瀬戸内ミリーがスマホを片手に立っていた。
「ちょ……!瀬戸内先輩ほんとにいたし!」
「後ろにいるって言った。」
片目が髪の毛で隠れた髪型にジト目の美少女、本名
「仙桃……欲しい……。タイラントクラブも食べたい……。」
「も~!いるなら事前に言って下さいよ!」
「配信してるのさっき知った……。」
「そうは言っても先輩のガワありませんよ?配信で食べるの不可能ですって。それにもう配信終わりますし……。」
「残りでいい……ちょっと欲しい……。」
「まだ残ってますから、良かったらどうぞ!配信終わりでしたら食べられますよね?」
美織がニコニコとそう言う。
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