「泡鉄砲の薙ぎ払い、くるよ!」
ルカルカが叫ぶと同時に、タイラントクラブが泡を水鉄砲のように噴出させて、右か左へと薙ぎ払う。
:2人ともよくよけた!
:やば!ヤシの木真っ二つやん
:その攻撃が来るってことは、巣穴に逃げる可能性大だぞ!
:お、有識者きた?
:つまり疲れてるってことだな
砂の中に潜っているタイラントクラブを刺激して、地上に引きずり出す際に、下からの突き上げを避けるところから、タイラントクラブ狩りはスタートした。
エサを食べる時以外は、基本砂の中に潜っている為、それを探して見つけ出すのも厄介であれば、砂から出て来る時に下からの突き上げがあるのも厄介と言われる所以だ。
「ルカルカさん、そっち行きましたよ!」
「任せて!
ルカルカの火魔法で、美織の気配に巣穴に潜らず逃げたタイラントクラブが焼かれて、口から泡を吹いている。
:また泡鉄砲の準備をしてるぞ!
:次に泡鉄砲をうったら、砂の中に潜って逃げる気だ!
:潜られる前に討伐出来なかったら巣穴でたぶん回復してる。
:巣穴にルカルカの
:飛び出たところを一撃斬だ!
「おけー!そうする!」
ルカルカがコメントに反応し、砂を潜って逃げるタイラントクラブを、巣穴で待ち伏せすることにした。
あまりに潜るスピードが素早すぎて、とても人間の足では追いつけないと判断したからだ。美織は何か言いたげにしながらも、初のコラボということで気を遣っていた。
先程タイラントクラブが出てきた巣穴まで移動すると、巣穴の上が一部こんもりと砂が盛り上がっている。タイラントクラブがこの下で休んでいるのは確実だろう。
「よおーし。私があそこに
「あ。はい!」
美織が剣を持ち直し、ルカルカの攻撃を注視していた。
──その時、美織は砂山から出ているおかしな線に気が付いた。
「ルカルカさん、待ってくださ──」
「
美織の声は間に合わず、ルカルカが火魔法を巣穴に向けて放った。
──と、ドカアッ!という音と共に、爆風に吹き飛ばされるルカルカ。それと同時に飛び出てくるタイラントクラブ。
「ルカルカさん!」
美織は走り寄ってルカルカを抱きとめた。
爆風の衝撃でふっとばされたものの、美織が受け止めたことで怪我はしていなかった。
「い……今の何!?」
「あーっはっは、これでトドメもドロップアイテムもあたしのものね!」
獄寺ちょこが姿を現し、ヤシの木の上で仮面をつけた姿で笑っている。
「獄寺ちょこ!またあんたなの!」
ルカルカが獄寺ちょこに怒っている。
「ど、どなたですか?」
「獄寺ちょこ。迷惑系ダンVtuberよ。人の配信に割り込んでは、トドメを奪ったりドロップ品をさらっていくの。」
「そうよ。今日はあんたらがターゲットってわけ。話題の剣呑寺いおりと、ルカルカの初コラボに乱入なんて、あー、またあたしが目立っちゃうわあ。うふふ。」
広げた指を口元に当てて、ニヤリと笑う獄寺ちょこ。
「い、いったい何が面白いんですか!?」
迷惑系なんてものに遭遇するのが初めてな美織は、獄寺ちょこの意図がわからず叫ぶ。
「お綺麗な配信している人間を邪魔する人間のことを、喜ぶ人たちもいるってことよ。」
獄寺ちょこがそう説明するが、美織には理解出来なかった。
「──それよりいいのぉ?あたし今配信中なんだけど。」
「勝手に配信してるんですか!?」
「それがこいつのやり口なのよ。勝手に人の配信に首突っ込んで、私たちを配信に乗せて数字を稼ぐっていうね。」
「剣呑寺いおり。あんたのガワは私の配信には流れていない。──その素顔、あたしの配信に乗っちゃってるけど?」
美織はハッとして顔を隠した。
「あーっはっは!もう遅いって!ダンVtuber荒らしはこれだからやめられないわ!顔をさらされただけで困るんだものね!」
「配信をとめてください。」
「嫌よ。今すっごい数字が伸びてるもの。噂のダンVtuber剣呑寺いおりの素顔!これ以上ない、いい話題をありがとうねえ?」
「うう……。」
「待って、いおりちゃん、コメントを見て、獄寺ちょこの配信、なんかおかしいわ。」
「え?」
「あたしの配信がなんだって?」
ルカルカにそう言われて、獄寺ちょこは自分の配信画面を、美織はリスナーの貼ったリンクから獄寺ちょこの放送へと飛んだ。
「な、なによこれ、どうなってんの!?」
獄寺ちょこは画面を見て叫んだ。
「これっていったいどういうことでしょう?何が起きてるのか私もわかりません。」
「見せて!」
ルカルカが美織のスマホを覗き込む。
獄寺ちょこの配信は、誰もが予想しない状態になっていた。
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