:まあでも確かに、タイラントクラブは配信でのインパクトは凄いのは認める
:特に身肉はドロップが少ないから、ほぼ流通ゼロのレベルだからな。
:噂によると政治家がいくような料亭でしか食べられないってやつだろ?
:一般流通は少なくとも聞いたことがないな
「そうなんですよね!」
美織はパチンと両手のひらを合わせた。
「そんな貴重なタイラントクラブの身肉が出ても、装備や武器の元が出ても、配信は盛り上がるんじゃないかと思いまして!」
:確かに甲羅と違って、鋏素材はかなり貴重
:でも泡をウォーターカッターみたいに薙ぎ払ってくるのも、かなり強力だろ
:いくら中層ったってソロってのは……
:気を引く役が必要だろ
:木を一撃でぶった斬るんだぞ?
:あの突き上げ厄介で、見ててイラつくんだよなあ
「だいじょうぶです、私、一撃なので!」
美織が、某ドラマの失敗しない医者のようなことを言い出す。
:なんでも一撃とかwww
:でも、市場に流通しないタイラントクラブの身肉は確かにどんな味か知りたい
:食べオフしてくれ
:お願いしますお金払うから!
:希少すぎて流通しない食材だぞ?いくら積めば手に入るんだよ
「まあ、身肉が手に入るのか、それとも鋏とかの他の素材が手に入るのかはわかりませんけど……。身肉だったらまた食べ配信をするつもりではいますけど、家計の足しに一部を除いて売りに出しますから、ひょっとしたら皆さんのもとに届くかも知れませんよ?」
:価格崩壊するくらい狩ってくれ
:幻の味を食べたい
狸穴琉夏:私も食べたい
:ちょwww
:ルカルカきたwww
:本物だ、チャンネルが有るぞ
「え?食べたいですか?じゃあ、もしよかったら、私と食べオフコラボ配信なんて……。
無理……です……よね?」
同接30万人を突破し、チャンネル登録者数がうなぎのぼりとはいえ、相手は100万人越えの大手だ。思わず及び腰になってしまうのも致し方ないというものだろう。
狸穴琉夏:ぜひぜひ!またお会いしたいですし、タイラントクラブも食べた~い!
:食べたいほうが本音だろwww
:助けたいおりんと、助けられたルカルカの異色コラボか!これは胸熱!
狸穴琉夏:あの時の話もしたいですしね!
「はい、でしたら、閃光の剣に連絡を入れさせていただきますね!楽しみです!」
はからずもこの配信中に、あの日助けた狸穴琉夏とのコラボが決定した美織は、ウッキウキでシャトーブリアンを切り分け、妹の依音といっしょに美味しく食べたのだった。
ご飯を食べ終え、依音と一緒にお風呂に入り、依音を寝かしつけた後で、美織はさっそくルカルカの所属ギルド、閃光の剣のHPにアクセスし、お仕事依頼のところから、ルカルカさんから誘われたのでコラボ希望です、と送信をした。閃光の剣は配信をしている探索者も多い為、こうしてギルドを通さないとコラボが出来ない決まりになっていた。
──次の日、学校に行っている最中に、自身のメールアドレス宛に閃光の剣からメールがあったと、通知画面に表示されていた。
休憩時間に気が付いた美織は、さっそく昼休みにゆっくりとそのメールに目を通す。
ルカルカから事前に聞いてあったとのことで、コラボは問題なし、狩り配信は美織の放送を希望、食べコラボは閃光の剣のギルド事務所で、という内容だった。
美織としては食べ配信だけのコラボなのだろうと思っていたのだが、タイラントクラブの狩りにも参加するつもりらしい。
了承しました、と返信すると、その日のうちに閃光の剣のHPと、ルカルカのSNSに剣呑寺いおりとのコラボ告知がなされた。
「見たよ!美織。ルカルカとコラボだって?すごい大手じゃん!すっごいね!」
親友の
「奈央ちゃん。」
「屋上でお弁当食べつつ、ゆっくり話を聞かせてよ!」
「わかった。」
美織たちの学校は、安全の為屋上にフェンスがある為、昼休みや放課後、屋上を自由に使うことが出来る。お弁当を食べる人用にベンチも設置されているが、雨風がそのまま当たるので、ハンカチをしかないと座れない。
懸念すべき点は、昼休みにバレーのトスをして遊んでいる子たちが定期的にいて、お弁当にバレーのボールが飛んでくる危険が常にあることくらいか。
美織は一度お弁当に当たってひっくり返されるという、えらい目にあったことがある。
だからあまり屋上は好きではなかったが、奈央が屋上を好きなのだった。
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