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第10話 シャトーブリアンのお味は

「いいにお~い。」

 依音がクンクンと鼻を動かしながら、ギガントミノタウロスのシャトーブリアンへと顔を近づかせる。


「熱いからあんまりホットプレートに顔を近付けちゃ駄目だよ?」

「はあ~い、おねえちゃん。」

 依音が素直に返事をすると、


:はあ~いだって、カワユス。

:ょうじょprprprpr

:早く食べられるといいねえ(ホッコリ)


 とコメントも盛り上がっている。

「お肉の焼ける間にですね、次の配信について報告したいと思います!」


:お、期待

:同接30万人いったぞ

:こんな中で何を狩るというのか


 ただギガントミノタウロスを食べているだけの配信でこの同接なのは、美織の一撃斬が次にどの魔物に発動するのかを期待してのことだろうと、美織は考えていた。


 それに、またアンケートによって勝手に配信内容を決められてしまうのも怖いのだ。

 だからこの配信中に、次の配信内容を発表するつもりでいたのだった。


「次はですね、中層でタイラントクラブを狩りに行こうと思ってます!食べてよし、装備品の素材としてよし!の魔物です!」


:タイラントクラブ!?ファーwww

:そりゃ確かにウマイとは聞くが

:鋏が双剣の強化素材なんだよな

:甲羅も防具としてかなりの希少素材だぞ

:でもあれちょっとしたダンプくらいある大きさのカニだぞ。素早さも自動車クラス。


「そうですね、水に潜られても厄介だし、地上でもかなりのスピードが出る魔物ですね。

 オマケに地上だと砂地にいて、そこが巣になってます。砂地からの突き上げはかなりの強力な攻撃になりますね。」


:それこそダンプカーに衝突されたレベル

:中層に潜れる探索者でも、タイラントクラブの突き上げにやられて、再起不能になった奴だってごまんといるんだぞ?


「だいじょうぶですよ、倒せる魔物しか狩りませんし。配信では安全第一です。」


:ちょっと待って下さいよ……。この子ヤベーこと今いいましたよ

:てことは、配信外じゃもっと危険な魔物にも挑んでいるっていうことか?


「そうですね?深淵ソロとか?まあ……倒せてもドロップ品がないので、証明する手立てが今のところないんですけど……。」


 美織は顎に人差し指を当てて、明後日の方向を向きながらそう言った。


:深淵!?深層だってソロで挑める奴なんて一握りだぞ!?

:この子ひょっとして、上澄み中の上澄み?


 コメントがひとしきり盛り上がる中、ようやく肉が焼けたのでさっそく食べることにする。まずは簡単に塩だけを振ったものだ。


「こんな感じですね。見えますか?」

 ナイフで切り分け、箸で持った肉の一切れを、画面に近づける。


 背景は透過素材でギガントミノタウロスの出て来たエリアの映像にしてある。そこにテーブルとホットプレートと、剣呑寺いおりとロリガワいおりが映っている画面だ。


 狩ってその場で焼いて食べる配信が人気なことから、それを模したイメージで、この背景にしてみたのだった。


「それじゃさっそく食べていきますね。まずは素材の味そのままということで、塩のみを振った食べ方から……。んっ、ふごい!これ唇だけで噛みちぎれちゃいます!」


:ああああ絶対うまいやつううう!

:うぎゃああああああ!

:食べたすぎる!

:滴る肉汁がもう……


「おいしーい!」

 依音も美味しそうに食べている。


:妹ちゃんホッコリ。

:いっぱい食べるんだよ~

:大きくなれよ~


 配信画面は、飯テロに対する阿鼻叫喚と、依音に対するホッコリコメントで埋め尽くされていた。


「ちょっとワサビと赤ワインにみりんと醤油と砂糖を混ぜたソースいってみましょう。

 ──あ、これは辛いやつだからだめだよ。こっちのやつはだいじょうぶだよ。」


 ワサビソースに興味を示した依音に、別のソースをつけて食べるよう指し示す美織。


「んんん~~~!!美味しいです……!これは別のも早く試さなくては!次はすった玉ねぎとニンニクに、醤油とお酒とみりんと砂糖と鶏ガラスープのもとを混ぜたものですね。」


 依音がそれにつけてパクパク食べているのだが、やはりそこは小学1年生。あまり量は食べられないらしく、ひとつの切れ端を食べきるのに、かなり格闘しているようだ。


「これも……あふっ……おいひいれふ。こんなお肉、人生で初めて食べました……!

 しあわあせぇ……。」


 ステーキ自体と、ナイフで切られた一切れは実写の為、否が応でも見ているリスナーたちの食欲を刺激してしまう。


:俺氏、この配信をオカズに白飯を食う

:俺もやすい奴だけど肉持って来た。気持ちだけでも肉を感じたい……

:唇で切れるってのが伝わる柔らかさだな


 配信を見ながら一緒に食事を取り始める者が増え始め、コメント欄がゆっくりになりだした。美織はそれを見ながら、依音と共にシャトーブリアンを堪能したのだった。


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