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第4話 今日はお肉の日

「それで構わない?美織ちゃん。

 高いから、当然税金とギルドの手数料が引かれて半分になっちゃうけど。」


「はい、問題ありません!」

「それでは、規定通り、マイナンバーカードの提示と探索者証の提示、また売却品の販売額振込先のわかるものをお願いします。」


 ギルド職員にそう言われ、美織はマイナンバーカードと探索者証、銀行の通帳を提出した。これは税金の申請の為にコピーする目的と、振込の為に必要なのだ。


 平たいお盆のようなものの上に、美織のマイナンバーカードと探索者証を乗せて、ギルド職員が一度出ていき、コピーを1部ずついただきました、と言って戻って来た。


 美織は返却されたマイナンバーカードと、探索者証と、銀行の通帳を鞄にしまう。

 これで数日、長くて一週間程度で、売りに出したラミアの毒剣のお金が振り込まれる。


「高校生でも単独で活動出来るようになって良かったわね。私の時代はギルドに所属してないと、何も出来なかったわ。」

「そうですね。法改正さまさまです。」


 美織が中学生の頃法改正があった。高校生の有名探索者がかなり増えたことで、ギルドや企業の取り合いが凄まじく、かなりの数の探索者が海外のギルドや企業に流れたのだ。


 日本では、当時ギルドか企業に登録していないと、ドロップアイテムを高校生が単独で売ることが難しかった。


 だが国内の企業は、中卒で就職する形で給与を支払うという条件のもとであり、どれだけ稼いでも一定の賃金しか支払われないという、モチベーションの上がらなさ。


 ギルドは所属すれば成人と同じ扱いだが、 先に高校生がギルドに所属出来る条件を定めてしまったことで、高校生が国内のギルドに加入するのが難しかったというのもある。


 よい条件を提示出来る国内の企業やギルドが少ないことから、国は有望な高校生の流出を防ぐ為、世論の後押しもあり、高校生でもギルドに所蔵せず活動出来ることになった。


 高校生が研修生としてでなく、正式にギルドに所属するにはさまざまな条件がある。

 上層に10回以上、同一のギルドのギルドメンバーとともに潜ること、などがそれだ。


 研修生としてもともと中学生時代からギルドに加入していると、条件をクリアしやすい為、美織が入れるとすれば女神の息吹であったのだが、どうしてもクリア出来ない条件があったのだ。


 中層以上の魔物からのドロップアイテムをギルドにおさめること。

 ある程度の強さがあることで、成人の探索者と同等と認める、という条件だ。


 これが美織には出来なかった。

 誘ってくれた阿平には申し訳なかったが、ドロップしないものはどうしようもない。

 だからソロになったのだ。


 倒すと姿を消してドロップアイテムだけがその場に残るダンジョンの仕組みから、討伐証明はドロップアイテムでしか出来ない。


 ドロップアイテムの落ちない美織は、冒険者証のランクは最低のGのままだ。

 だが中層のボス、下層であれば普通に出て来る魔物のドロップアイテムを手に入れた。


 これでようやく万年最下位ランクから脱却出来る。美織にとってはこれも嬉しかった。

「冒険者証のランクが上がったら、また見せに来ますね!阿平さん!」


「ええ、楽しみにしているわ。」

 沙也加は嬉しそうに微笑んだ。中学生の頃から知っている美織だ。沙也加は年の離れた妹のように美織をかわいがっていた。


 女神の息吹を出た後で、美織はさっそくミノタウロスの出る二子玉ダンジョンへと向かった。ダンジョンへ潜ると、浮遊タイプの自動追尾配信機器のスイッチを入れる。


 しばらくすると、さっそくコメントがあった。


:お、始まってる!

:この間の強さが本物か、見にきたぞ~

:ルカルカの配信に一瞬ちらっと映ってた美少女、あれって中の人?


 数名のコメントが流れた。これならアンケートも問題なさそうだ。が。

「え?え?映ってたんですか!?中の人なんていませんよ!私は剣呑寺いおりです!」


:またまた~

:おいVtuberにヤボなコト言ってんな

:この間はルカルカ助けてくれてありがとな!


「こちらこそ、ルカルカさんのところから配信に来てくれてありがとうございます!

 え~と……。はじめましての方も、そうでないかたも、こんいお~!剣呑寺いおりです!これからミノタウロスのお肉目当てにダンジョンに潜ります!お楽しみに!」


 浮遊タイプの自動追尾配信機器が、体に取り付けたシールを介して、美織の動きを自動的にVtuber剣呑寺いおりとして配信してくれている。美織は画面に向けて手を振った。


 美織の後ろにダンジョン内部が映り込んでいる。ここは少し霧のある、尖った岩が地面や天井から出ている、鍾乳洞のようなエリアだ。奥の方に行くにつれ、霧が濃くなって先の方は見えなかった。


:おい、今ミノタウロスっつったか?

:下層にいるやつだろ、だいじょうぶかよ

:いや、この子単独だろ、まさかだろ……


 コメント欄はにわかにざわつき出した。


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