ラグナス村長とガーリンさんが顔を見合わせる。
「こちらで食用花を使って作った物を売ってもいいと思いますし、色々いけると思いますよ?」
「お、教えてくれないか?
どうすればいいんだ?」
ラグナス村長が食い気味で聞いてくる。
「じゃあ、これと……これと……、このあたりを少しつんでいきましょうか。
ガーリンさん、ご自宅のキッチンをお借りしても?」
「ああ、もちろんだ、むしろ、マイヤーに教えてやってくれ。」
とうなずいてくれた。
俺たちはガーリンさんの家に向かった。アーリーちゃんはカイアたちとままごとをしているようだった。カイアがお父さんで、アエラキが子ども役なのかな?楽しそうに遊んでいる。
「マイヤー、ちょっと今からジョージが教える料理を覚えてくれんかね?」
「料理……ですか?」
「村の裏手にある花がどうも全部食べられることが分かったんだが、そのまま食べるには可食部分が少ないから、加工して売ったり、育てて花そのものを売ってはどうかとジョージに提案を受けてな。」
ガーリンさんの言葉に不思議そうに首をかしげるマイヤーさんに、ラグナス村長が説明をする。
「まあ、そうなんですね、わかりました。
頑張ってみます。
お願いしますね?ジョージ。」
「はい、よろしくおねがいします。」
俺はお酢、オリーブオイル、蜂蜜、にんにくチューブ、レモン汁、塩、黒胡椒を出した。オリーブオイルはこちらではラタンオイルと呼ばれていて簡単に手に入るものだし、にんにくも売っている。蜂蜜のかわりに砂糖でもいい。
レモンは最近俺が販売をはじめたし、黒胡椒だけ俺が譲ってやれば、今あるものだけでも出来るからな。
食用花は何を使ってもいいが、今回は色とりどりにしたかったので、桃色、黄色、橙色、紫色を選んだ。
ボウルにお酢40ミリリットル、蜂蜜大さじ1、塩小さじ1/3、レモン汁小さじ1、にんにくチューブ少々、胡椒少々を入れてよく混ぜ合わせたら、オリーブオイル大さじ1を少しずつゆっくり加えて、とろみが出るように混ぜ合わせる。
洗った食用花の水分を拭き取って、縦長の瓶の保存容器に入れたら、ボウルの中身を注ぎ入れ、上下にフリフリして混ぜ合わせ、空気を脱いて保存容器の蓋をしめたら、食用花のイタリアンドレッシングの完成だ。お酢をたくさん入れるのは振りやすくする為なので、なくても、少しだけにしてもうまい。
お酢たくさんを入れた分、蜂蜜の量は増やしているが、お酢を使わない場合はオリーブオイルを3倍にして、砂糖を1/3、つまり小さじ1にしている。塩は岩塩だとなおのことうまくなると思う。
冷蔵庫でしばらく保存していると、花がしっとりして花自体に味がつき、色も鮮やかに美しくなる。
「冷蔵で2週間は持ちますし、見た目もきれいなドレッシングですから、王都におろしてみてはいかがでしょうか?
必要なら、知り合いの商人にあたってみますが。」
「今もキレイなのに、時間がたつともっとキレイになるだなんて、食卓がとても華やかになるわ!」
マイヤーさんが少女のようにはしゃいでいる。
「どの花を使ってもいいですし、あの場所は花を育てるのに具合がいいようですから、村の新たな産業になるかも知れませんね。」
「ありがとう……!ありがとうジョージ!」
気の早いラグナス村長は、既に泣きそうになりながら俺の手をギュッと握ってくる。
「これを見本にして、注文があるたび必要な数作るようにしよう。
さっそくですまないが、その、ジョージの知り合いの商人を紹介して貰えないかね?」
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