アエラキは俺の腕から抜け出すと、風魔法を身にまとってふわりと浮かび上がり、アーリーちゃんの前に近付いた。
「ピューイ!」
アーリーちゃんを見つめて鳴くアエラキに、アーリーちゃんはマイヤーさんを見上げた。
「お友だちになろう、ってことじゃあないかしら?アーリーもアエラキちゃんに挨拶してあげたらどうかしら。」
マイヤーさんにそう言われて、アーリーちゃんはそっとアエラキに、手にしていたお花を差し出してくれる。
「はい……。あげる……。」
アエラキはそれを見て、そのキレイなお花に顔を近付け──モソモソと食べだした。
それを見たアーリーちゃんが、困惑したように再びマイヤーさんを見上げている。
「ああ、それは食べられるお花なんだよ、アーリーちゃん。」
「食べられる……の?」
俺の言葉に、手にした花をアエラキが食べ続けているのを見つめるアーリーちゃん。
「ああ。アエラキだけじゃなく、アーリーちゃんも、みんなも食べられるぞ?」
「──それは本当かね!?ジョージ!」
ラグナス村長が急に大声を出した。
「……はい、そうですが、ご存知なかったのですか?」
「花を食べようと思ったことはないから、今まで考えたこともなかったよ。花ならこの裏手にたくさんはえているんだが、他にもあるか、見てくれないか?」
「ええ、構いませんよ。マイヤーさん、ちょっとラグナス村長と裏手を見てきますので、カイアとアエラキを、少しのあいだお願いできませんでしょうか?」
「ええ、もちろん構いませんよ。」
マイヤーさんが笑顔でそう言ってくれる。
「カイアちゃん……、アエラキちゃん……、あそぼ……。」
アーリーちゃんが小さな声でそう言って、
「ピョル!」
「ピュイ!」
カイアもアエラキも嬉しそうに応じた。アーリーちゃんと年齢の近い子がこのあたりにはいないからな、アーリーちゃんも嬉しそうだ。
俺はラグナス村長と、ガーリンさんとともに、村の裏手にあるという花畑に向かった。
「……これは……!すごいですね!」
あたりは一面の色とりどりの花畑だった。赤、黄色、紫、いろんな花が咲いている。
「これらは自生しているものですか?」
「ああ、勝手に生えているものばかりだ。
本当はここもつぶして畑にしたいと思っているんだが、アーリーちゃんの大切な遊び場でもあるから、どうしたものかと思っていてね……。」
ラグナス村長がそう言う。
ああ、なるほど。
俺はしゃがみこんで1つ1つ花を調べていく。俺のスキルは食材になるものに反応するからな。というか、これは……。
「どうだね?他にも食べられる花はありそうかね?」
「他にも、というか、すべてですよ。
ここは宝の山ですね。」
「本当かね!?ジョージ!」
俺の言葉にラグナス村長が興奮する。
「というか、このコポレという小さな花がたくさんはえているのがいいんでしょうね、おかげで雑草がまったくはえておらず、花にとってとてもいい環境が自然にできていいますよ。」
本当に、見事に花しかない。普通はある程度、畑にしたって雑草は生えるものなんだがなあ。
「……ただ、まあ、食べられはしますが、大半のものは花の部分だけの話なので、これだけあってもみなさんのお腹が満たせるかというと、それはまた別の話だと思います。」
「そんな……。」
ラグナス村長ががっかりしている。
「それよりも、これを村の新たな商売にするのがいいでしょうね。」
「商売?」
「ええ。お茶にしたり、ケーキにしたりとまあ色々ですが、美しい色合いを楽しむのが食用花の基本ですから。」
「育てて売ったほうがいいと?」
ガーリンさんが聞いてくる。
「そうですね、食べられる美しい花を扱っているところは、俺の見たところ見当たりませんし。まあ、いずれ真似するところも出てくるとは思いますが、その間に取引先を確保さえしてしまえば、安定した収入源になると思いますよ?」
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