ちなみに顔は父親似で、父は中年男性同士が恋愛するコメデイ恋愛ドラマの部長役の人に非常によく似ている。性別年齢変換アプリで年齢をいじくったら、父と同じ見た目になったので、俺ももう少し年をとったらああいう見た目になっていたのだと思う。
ちなみに童顔マッチョ好きな円璃花は、主役の男性俳優のファンで、一緒にドラマを見ていた時は、最初は父が若い男を追いかけ回しているように見えてちょっと苦手だった。
それをのぞけばドラマ自体は面白かったのでハマって見ていた。男同士ということもそこまで抵抗を感じなかった。
円璃花は他にも、世界で最も強いとされるボクサー相手に、キックを封印させられて戦った、勇気ある若いキックボクサーのファンだった。俺は両親が共に童顔だった為、俺もしっかり童顔で、円璃花としては俺のそこが良かったらしい。
ドラマの主役の男性の体つきが羨ましく、いずれはあそこまで鍛えたいと思っていたからか、童顔でナメられるのが嫌いでヒゲをはやしていた父と同じく、童顔な自分の顔が嫌で大人顔になりたいと思っていたからか、転生後にその両方を手に入れられたことについてだけは満足している。
「風呂はこっちだ、いこうか。」
「はあい。」
待っている間に飲んでくれ、と出したカモミールのミルクティーの残りを一気に飲み干して、円璃花が椅子から立ち上がり、俺のあとをついてきた。
「わあ!結構広いのね!木のいい匂い!」
「だろう。俺も気に入っているんだ。」
風呂場に通すと、円璃花が歓声を上げた。
「じゃあ、先に体を洗うわね、終わったら声をかけるから、ちょっと待ってて?」
「タオルはこれを使ってくれ。バスタオルはこれ。体を洗うのはこれを使ってくれ。」
俺は円璃花用のタオルとバスタオルを出して、ついでに脱衣カゴを出して廊下に置き、そこにタオルとバスタオルを置いた。
そして風呂の中を案内し、俺が体を洗うのに使っているものを説明する。
円璃花は俺から受け取ったバスローブも、脱衣カゴの上に重ねて置いた。
何せこの家は日本と違って脱衣場なんてものがないのだ。ドアを開けたらすぐ洗い場と浴槽がある。まあ、一人暮らしの家なら脱衣場がない家もあるから、別にそれでもいいんだが、一緒に暮らすとなると、今後風呂を出るタイミングをお互いに考えなくちゃな。
リビングで待ってるな、と声をかけて、俺は円璃花を残してリビング兼キッチンに戻ると、円璃花が飲み終わったカップとソーサーを洗って待っていた。
するとそこに、カイアが2階から降りてきて、やれやれ、やっと寝たわーとでも言いたげな表情で、おでこに枝の手を当てて拭くような仕草をしながらこちらにやって来る。
……カイア、それはひょっとして、俺の真似か?確かにアエラキがなかなか寝ない時にそれをしていたが。
──すまない、和んだ。
「カイアは一緒に寝んねしないのか?
お父さんはもう少し、寝るのに時間がかかるぞ?」
可愛すぎて笑いが漏れそうになるのをこらえながらそう話しかける俺に、不思議そうにしているカイアを見ながら言う。
「じゃあ、お姉さんが戻ってくるまで絵本を読んでやろうな。読み終わったらちゃんとカイアも寝んねするんだぞ?」
カイアがこっくりうなずいたので、俺はカイアを膝に乗せて絵本を読んでやりながら、円璃花が風呂から上がるのを待った。
「──お待たせ、って、あら、カイアちゃんたち、2階で寝たんじゃなかったの?」
俺の膝の上でゆらゆらと船を漕いでいるカイアを見て、バスローブを着てリビングに戻って来た円璃花が首をかしげる。
「アエラキを寝かしつけてそのまま起きてきてしまってな。絵本を読んでやっている間に眠くなったらしい。
ちょっと2階で寝かせてくれるから、もう少し待っててくれるか?」
俺はカイアを抱き上げて、そのまま椅子から立ち上がる。
「ええ、構わないわよ。」
円璃花はそう言って椅子に腰掛けた。
俺は殆ど寝落ちしているカイアを抱き上げて2階に上がり、アエラキの横にそっと置いて寝かせてやった。
「おやすみ、カイア。」
カイアにもブランケットをかけてやり、俺は1階に降りた。
「お待たせ。じゃあ、いこうか。」
「ええ。」
円璃花が椅子から立ち上がり、2人で風呂場に向かう。
「譲次に洗ってもらうの久しぶりね!」
円璃花が嬉しそうに風呂場に置いてある木の椅子に腰掛ける。
「そうだな、どれくらいぶりかな?」
「……譲次が死ぬ半年前よ。」
円璃花が声のトーンを落とす。
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