「おすそわけしたの?」
「ああ。喜んでくれたよ。」
部屋に戻った俺に尋ねたあと、相変わらずね、と円璃花が笑った。
「簡単なのに、こっちじゃ揚げ物ってあんまりないのね。油が貴重なのかしら?」
「そっちの国でもそうだったのか?」
「一度も出てきたことはないわね。」
「あまり気にしたことがなかったが、ご近所さんにおすそわけした時も、珍しい料理だと言われたな。もしかしたらそうなのかも知れないな。今度聞いてみよう。」
食事が終わり、手伝いたいと申し出てくれた円璃花と共に後片付けをする。カイアもやりたがったので、一緒に洗い物をした。
アエラキはマイペースに1人で積み木遊びを始めていた。食べてすぐにお風呂はさすがにお腹に悪いと思ったので、しばらく2人を自由に遊ばせてやる。
「先にこの子たちを風呂に入れて寝かしつけるから、その前に髪をほぐしておこうか。
少し絡まっているようだし、そのまま洗うと痛むしな。」
俺はそう言って、円璃花の髪をブラシでとかしてやった。お手伝いを終えたカイアも、アエラキと一緒に後ろで積み木遊びを楽しそうにやっている。
「よし、こんなもんか。じゃあ、悪いけど先にこの子たちと風呂に入ってくるから、着替えて待っていてくれ。」
「──着替える?」
「ああ。付き合ってたって言っても、今は違うんだし、今の体はお互い見たことがないだろう?だからこれを着ておいてくれ。」
俺はそう言って、円璃花にピンクのバスローブを手渡した。
「これを着たままお風呂に入るってこと?」
「髪を洗っている間はな。」
「先に体を洗ってからにしてもいい?
譲次に髪を洗われると、体を洗う前に寝ちゃわないか心配だから。」
「……だから寝るなよ。」
「我慢するけど、保証できないもの。」
「分かった、じゃあそれでいい。」
「ありがと。」
「カイア、アエラキ、お風呂に行こう。」
俺は2人を連れて先にお風呂に入った。
風呂から上がり、2人を2階に連れて行こうとすると、アエラキが風魔法でふわりと宙に浮かび上がり、そのまま2階に移動する。それを見たカイアもあとに続いて階段を上がった。これなら2人を抱っこしてのぼる時用の手すりをつけなくてもいいかな?
カイアもアエラキも、自分でドアノブを回すことがまだ出来ない為、俺の部屋のドアを開けてやり、2人を中に入れ、子ども用ベッドに順番に1人ずつ乗せてやる。
「これからお父さんはお姉さんの髪をお風呂で洗ってあげなくちゃいけないから、まだ一緒に寝られないんだ。カイア、アエラキを寝かしてあげてもらえるか?」
俺がそう尋ねると、カイアはなんだかキリッとしたような表情で、ピョルッ!と体を前に倒してうなずいた。俺に頼まれたことでどうやら張り切ったらしい。
「ピョル!」
カイアがアエラキをうながして、カイアがトントンするように、アエラキもカイアの体をトントンしている。
俺が編み出した、トントンしている側が先に寝てしまうという技を、2人がお互いにやるつもりらしい。
なんだこれ、かわいいな。
デジカメなら撮れるんじゃないか?
俺は思わずデジカメとSDカードを出してセットし、動画を撮り始めた。
お互いにトントンしているが、まだどちらも寝そうにない。寝るまでを録画したかったが、さすがにだいぶ時間がたったので、俺自身が湯冷めして風邪をひきそうだ。その前に円璃花の髪を洗ってやるために、そこまでの分を保存して机の上に置き、1階に降りた。
「待たせたな。」
戻ってきたバスローブ姿の俺を見て、円璃花が目をみはる。
「譲次のそんな姿、初めて見たわ。」
「普段はパジャマだし、こういうのは俺も普通は着ないな。まあ、俺も濡れてもいいように、だな。」
「でも、前もいい体してたけど、今は前より更にいい体してるわよね!
すごいカッコイイ。」
「それはどうも。」
俺は元々体を鍛えるのが趣味だったので、年齢の割にはガッチリしている方だった。体脂肪計の測定でも、20代の成人男性の平均よりも筋肉量があるのが自慢だった。
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