俺は円璃花に少しだけ茶碗によそったご飯を渡した。美味しそうにもぐもぐと頬張る姿がげっ歯類のようだ。
円璃花はいつも幸せそうにご飯を食べる。本人も料理をするし、よく一緒に料理をしたが、何より食べている時の幸せそうな顔を見るのが好きだった。
カイアとアエラキが上手にアサリを殻から外せなかったので手伝ってやる。円璃花がアエラキのを手伝ってくれた。
「美味しい?」
そう言いながら目を細めてアエラキの食事を手伝ってくれる。アエラキもカイアに負けず劣らず人見知りだが、どうやらもう怖くないようだ。
「──さて、いよいよ食べようか、悪魔の食べ物を。」
他のものでしっかりお腹を満たしたから、食べすぎるということもない。
俺はワクワクが隠せない表情を浮かべてこちらを見ている、円璃花、カイア、アエラキを見て、そっくりだな、と笑った。
「さあ、熱いから気をつけてな。」
俺はテーブルに、山盛りになった唐揚げ、取皿、そしてマヨネーズをドン、と置いた。
これが円璃花の言う悪魔の食べ物である。
糖質は低いがカロリーの化け物。他のものでおさえないとえらいこっちゃになる。
だが、うまいんだよなあ……。
円璃花は唐揚げを1つ取ると、取皿の上でたっぷりとマヨネーズをかけて、フウフウと息を吹きかけてから一口で食べた。
「んん~~!!!美味しいいいいい~!」
幸せそうな円璃花の様子に、カイアもアエラキも真似をしたがった。
マヨネーズが大きくて重たいので、俺がかけてやって、2人がそれぞれフォークで唐揚げを突き刺して自分で口に運ぶ。
「ピョルッ!!」
「ピューイ!ピューイ!」
唐揚げは食べさせたことがあるが、マヨネーズをかけた破壊力に2人とも目を丸くして喜んでいる。気に入ってくれたようだ。
「そう言えば、アエラキちゃんてウサギに見えるけど、ウサギって肉大丈夫なの?」
と円璃花が聞いてくる。
「ウサギじゃなくてカーバンクルな。
親御さんに聞いたら、雑食だから何でも大丈夫だそうだ。」
何を食べるか分からなかったからな。カイアの時も手探りだったし、聞ける相手のいるアエラキについては、俺もしっかり事前に確認していた。
「そう、ならこれからも一緒におんなじ食事を楽しめるのね、良かった。」
と円璃花が笑った。
「──ちょっと外に出てくる。
2人を頼めるか?」
「構わないけど、どうするの?」
「ちょっとな。」
俺はお皿に乗せた唐揚げにふきんをかぶせて籠に入れ、取皿とフォークとマヨネーズを一緒に入れて外に出た。
外では護衛の兵士の人たちが、半分ずつ交代でご飯を食べている真っ最中だった。
「お疲れ様です。作りすぎてしまったのですが、良かったらいかがですか?」
俺がふきんを取って唐揚げを見せると、兵士たちがわあっと歓声を上げた。
「よろしいのですか?」
「ええ、熱いうちにどうぞ。これをかけて食べると、なおのこと美味しいですよ?」
とマヨネーズを指さした。奪い合うように唐揚げを皿に乗せ、マヨネーズをかけて食べる兵士たち。
「これは……ピピルですね!こんなにピピルにあう食べ物は初めてです!」
食事の順番じゃない兵士たちが、よだれをたらしそうな顔で、羨ましそうに食事をしている兵士たちを眺めている。
「そんな顔をしなくても、すぐにお前たちにも食べさせてやるから。」
恐らくはリーダーなのだろう、一番いかつい兵士がそう言うと、残りの兵士たちもわあっとわいた。
「ありがとうございます、とても美味しいです。お皿と籠はどうしたら?」
「明日の当番の方にでも渡して下さい。その方たちから受け取りますので。」
俺はそう言って家の中に戻った。家の中では円璃花にマヨネーズをかけて貰いながら、嬉しそうにカイアとアエラキが唐揚げを食べている。2人の口についたマヨネーズを円璃花が拭いてやっている。どうやらうまくやれそうだな、と俺は思ったのだった。
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