アエラキの風魔法が、さっきまでカイアが触れていた水晶を持ち上げ、カイアとアエラキの間に浮かびがった。
柔らかな魔法の光に包まれて、なんだかとても幻想的な光景だった。
「いったい何を……?」
アエラキの突然の行動に、その場にいた全員が、わけがわからないまま固唾をのんで見守った。
「ピューイ!」
「……ピョル……?」
アエラキがカイアに何やら話しかけているように見える。
2人の間に浮かび上がった水晶に、俺たちから見て右からアエラキが、左からアエラキにうながされたカイアが、それぞれ両手を触れた。水晶がパアアアアアアッと光に包まれたかと思うと、水晶から放たれた光が細くなり、ある方向を差してまっすぐにのびた。
「おお!!」
誰ともなしに声が上がり、そして光が伸びていない水晶の反対側に、何やら映像が浮かび上がっている。
「これは……!間違いない、聖獣の卵の位置だ!地図をよこしなさい!」
「早く地図をお持ちしろ!」
アーサー国王に言われて、ジョスラン侍従長が従者に命じ、元々用意してあったのだろう地図を、従者が持ってきてテーブルの上に並べて広げた。
地図は何枚かあって、この大陸全体の大きなもの、バスロワ王国全体のもの、ノインセシア王国全体のものもあった。
「……この方向は、はやりノインセシア王国のようだの。」
「この映像は……、山の中のようですね?
近くに湖のようなものが見えます。」
ランチェスター公とサミュエル宰相が、ノインセシア王国の地図の中から該当する場所を探す。
「……おそらくはここだと思うんだがの、どうだね?メイベル。」
ノインセシア王国に長年住んでいるメイベル王太后に、ランチェスター公が地図を見せながら確認するように尋ねた。メイベル王太后の反応をみんなで見守る。
「間違いないと思いますわ。
ロット山(さん)のミミパパ湖です。ロット山は聖なる山と言われ、普段は人が山頂まで近付くことはありません。ここに聖獣の卵があるのは自然なことだと思います。」
地図と水晶の映像を見比べたメイベル王太后が、うなずきながらそう言った。
「すごいぞ!2人とも!」
「ピューイ!」
俺に褒められて嬉しそうにアエラキが、風魔法に包まれたまま空中を飛び回った。
「あらあら。」
「ふふふふ、かわいい。」
嬉しそうなアエラキの姿に、メイベル王太后と円璃花が目を細めて笑った。
カイアは空中に浮かんでいることが怖いのか、泣きながら俺に枝の手を伸ばして抱っこをせがんできたので、そのまま抱き上げようとすると、アエラキが風魔法を解除して、突然ずしっと俺の腕に重みがやってきた。
「──おっと。」
急なことだったので一瞬腕が下がりそうになったのに耐えてカイアを胸に抱いてやる。カイアはようやくホッとしたようだった。
「怖かったのか?」
そう俺に尋ねられるカイアの様子を、空中に浮かんだままのアエラキが、首をかしげて後ろからのぞきこんでいる。
それに気が付いたカイアがアエラキを振り返り、大丈夫、とでも言うように、枝の手を上げてピョル……と言った。
「──おっと。」
アエラキが風魔法をといたかと思うと、俺の腕に無理やり潜り込み、俺の腕とカイアの間におさまってカイアにスリスリしだした。
カイアが困っているのを見て、なんとかしてやりたくなったのかな?
1人じゃ無理でも、精霊2人の力を合わせればどうにかなると思ったんだろうか。
実際どうにかなって良かった。おかげで円璃花の聖獣の卵が見つかったわけだしな。
カイアが自分にスリスリしてくるアエラキの体を、枝の手でナデナデしてやっている。
困っていた自分の為にやってくれたのが分かっているのかもな。
アエラキも撫でられて嬉しそうに目を細めている。2人とも仲良しだなあ。
「カイア殿、アエラキ殿、本当に助かりました。これで聖女様の聖獣の卵を探しに行くことが出来ます。」
「だが、ノインセシア王国にあるということは、聖女様の保護先が決まる前に、一度聖女様はノインセシア王国に戻らなくてはならないかも、ということにもなるな……。」
カイアとアエラキにお礼を言うサミュエル宰相、考え込んでいる様子のアーサー国王。
「聖獣は聖女様とともに育つものじゃからのう。早く見つけるにこしたことはないて。全国王会議の日程次第では、先にノインセシア王国に行かねばならんかも知れんのう。」
とランチェスター公が言った。
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