バタバタと宮侍医が駆け付けてくれたが、もう事なきを得たとして、ジョスラン侍従長が対応し、宮侍医は帰って行った。
カイアが聖魔法を使って治療したことは伏せてくれた。聖魔法を使う精霊はかなり特殊であることに鑑みてのことだろう。
お騒がせしてしまってごめんなさいね?と絶世の美女である聖女様に申し訳なさそうに言われて、年配の宮侍医はデレデレしながらとても嬉しそうで、サミュエル宰相をはじめとする王族たちに、だらしがないぞと苦笑され、頭をかいていた。
「それで、カイア殿と言ったか、そちにたっての願いがあって、お父上にお願いをして呼んでいただいたのだ。このアーサーの願いを聞いては貰えないだろうか?」
アーサー国王が笑顔で優しくカイアに話しかけてくれる。
「ピョル?」
カイアは不思議そうにアーサー国王を見上げている。
「カイア、出来ることなら協力してやってくれ。このお姉さんが聖獣の卵を探しているんだが、カイアなら見つけられるかも知れないって、王様たちが言うんだ。」
「ピョル……。」
カイアは自信なさげに俺を見上げてくる。
「大丈夫だ、カイアに探せないくらい、すっごくすっごく、遠くにいることもあるからな、見つけられなくても、カイアが気にすることないんだぞ?」
俺にそう言われて、カイアは分かったとでも言うように、体を前に倒してピョルッ!と言った。
「では、聖獣はどこにいるのか、と考えながら、心のなかで話しかけるようにしてこの水晶に触れて下さい。」
ジョスラン侍従長がカイアの前に、布の上に乗せた水晶を差し出した。
「聖獣がどんなものかうまくイメージ出来ない場合は、聖女様と仲良くしてくれる卵がどこにいるのか、どうしたら聖女様にお友だちが出来るのかな?ということを、お考えになられるとよいですよ。」
そう言われて、カイアが水晶を包み込むように、両方の枝の手で触れた。
ピョル~、と、目をギュッと閉じてなにやら唸っていたが、水晶は反応しなかった。一度目をあけてもう一度ピョル~!とギュッと目を閉じるも、やはり反応はなかった。
「もともと聖女様はノインセシア王国からいらしたわけですし、ノインセシア王国に聖獣の卵があらわれていた場合は、距離が遠すぎて今のカイア殿には見つけられないやも知れませんね。」
とサミュエル宰相が言った。
「ピョル……。」
カイアが申し訳なさそうに俺を見てくる。
「たいじょうぶだぞカイア。
さっきも言ったろう?遠すぎたら見つからないこともあるって。仕方ないさ、探してくれてありがとうな。」
みんなも口々にカイアにありがとうと言ってくれ、カイアは恥ずかしそうな申し訳無さそうな表情を浮かべてピョル……と言った。
「そのうちカイア殿の力が増したら見つかることもあるやも知れません、気長に待ちましょう。今すぐに見つからずとも、いつか必ず見つかるものなのですから。」
シャーロット王妃の言葉に、その場にいた王族たちがうなずく。
その様子をじっと見ていたアエラキが、突然、ピューイ!と鳴いたかと思うと、体に風をまとって空中に浮かび上がった。
「──飛んだ!?」
「この大きさで飛べるのか!?」
大人の王族たちが驚いている。
「アエラキ!?お前飛べたのか!?」
驚いてアエラキを見る俺に、
「ご存知なかったのですか?」
とメイベル王太后が聞いてくる。
「はい……。正直初めて見ました。」
と俺は素直に答えた。
「というか、魔法使いって飛べるものだということを初めて知りました。」
という俺に、
「人間の魔法使いは飛べやせんよ?
精霊魔法とはことわりが違うからの。現代魔法にも風魔法はあるが、魔法の発生するもとがことなる。精霊の加護を受けた精霊魔法使いだけが精霊と同じことができる。」
とランチェスター公が教えてくれた。
「ピョルッ!?ピョルルッ!?」
アエラキの風魔法がカイアの体を包んで、カイアまでもが空中に浮かび上がる。カイアは地面に足がつかないことを怖がって泣きながら、俺に思わず枝の手を伸ばした。
「──大丈夫か?」
俺は立ち上がってカイアを抱き上げてやろうとしたが、アエラキが大丈夫とでも言うように、俺を見ながらピューイ!と鳴いた。
「何をするつもりなんだ?アエラキ。」
アエラキはそのままジョスラン侍従長に前足をかざした。
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