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第33話 おつまみミックス納豆と鶏むね肉の一口チーズボール唐揚げ②

「まだ信じられなくて、片付けられないでいたの。未練がましく毎日掃除して。

 でも、ジョージが使うなら、兄もきっと喜んでくれるわ。」

「アシュリーさん……。」

 そんなことがあったのに、彼女は人間に優しかった。どんな気持ちで接していてくれたのだろうか。


「……ねえ、ジョージ。」

 部屋を立ち去りながら、アシュリーさんが背中で俺に聞いてくる。

「うん?」

「私たち、きっと人間と手を取り合えるわよね。兄のような死に方をする人は、きっともうあらわれなくなるわよね。」

 アシュリーさんの声は涙で震えていた。

 俺はなんとなく、カイアを抱いて眠った。


 次の日みんなに見送られながら、俺は馬車で町へと戻り、すぐさまヴァッシュさんの工房へと向かった。

「おお、ジョージじゃないか!」

 工房の入り口でロンメルに出くわした。

「家庭用食器洗浄機の様子を見に来てくれたのか?」


「いや、今日は別件なんだ。」

「別件?」

 話しながら2人揃って工房の中へと入る。

 カウンターにいたいつもの職人が、ヴァッシュさんを奥に呼びに行った。

「おお、ジョージにロンメルさんか。すまんな、まだ改良に時間がかかっとる。」


「そうでしたか。気が早すぎたかな。」

「今日は、俺は別件で来たんです。

 魔道具を作っていただきたくて。」

「魔道具?」

 ヴァッシュさんが首をかしげる。

「魔宝石を、魔道具に組み込まれたことはありますか?」


「あるにはあるぞ。

 なんだ、何を作りたいんだ?」

「敵を感知する魔宝石に連動させて、ゴーレムの出る魔法石を反応させる魔道具を作りたいと思っています。」

「2つの魔宝石を連動!?

 そりゃ無理だジョージ。

 魔石を連動させるのとはわけが違う。」


「どう違うんですか?」

「魔道具はそもそも、魔石を発動させる為に作られているもので、魔石単体では動かないから存在するものだ。

 だが、魔宝石はそれ単体で発動する仕組みだから、魔石を発動させる仕組みに魔法石が反応せんのだよ。」


「ですが、あるにはあるんですよね?」

「ひとつならな。魔宝石の発動の仕組みは、衝撃を与えるか、それに触れて念じるかの2つに分かれる。

 魔宝石に衝撃を与える役割を、魔石に担わせたものなら存在する。時間が来たら爆発するようにな。」


 ようするに、魔宝石の時限爆弾か。

「だが、魔宝石同士の連動は出来ん。

 片方の魔法石の発動結果に、別の魔宝石を連動させて発動させるような仕組みは、どの工房でも持っとらんよ。

 それが出来たら革命だ。」

 そんな……。


「師匠、私、やってみたいです。」

 そこにミスティさんが顔を出す。

「魔宝石の連動は、ずっと研究してみたいと思ってたんです。やらせてもらえませんか?もちろん、食器洗浄機の改良も忘れずにすすめますので。」


「しかしな……。」

「なんとかお願いします。

 研究費用は出しますので。

 コボルトの集落を守れるかどうかが、それにかかってるんです。」

「コボルトの集落?」


 俺はこれからやろうとしていることを、ヴァッシュさんに説明した。

「そんな事情があったのか……。

 わかった。そういうことなら、やってみよう。だが、ミスティ、本来の仕事に加えてそいつをすすめるとなると、時間が足らんのじゃないか?」


「私のつくった魔道具で、誰かを守れるのなら、寝る時間なんて惜しくないです。

 絶対成功させてみせます。」

「睡眠は取ってくださいね……。」

 不眠不休でやりとげそうな勢いのミスティさんに、俺は心配になって告げる。


「またしばらくしたらいらして下さい。

 結果を報告しますので。」

「分かりました、どうか、よろしくおねがいします。」

 お礼を言って工房を出た俺に、ロンメルが声をかけて引き止めてくる。


「なあ、ジョージ、ひょっとして、俺の食器洗浄機も、開発費用が本当ならかかるんじゃないのか?」

 するどいな。

「まあ……そこはいいじゃないか。」

「よくないさ。お前がたてかえてくれてるんだろう?」


「開発出来て売りに出せば、別に元は取れるんだ、心配するなよ。」

 ロンメルは何やら思案していた。

「町にコボルトの店を出すと言ったな、ジョージ。」

「ああ、そのつもりだ。」


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