「ナティスだよ。」
「ナティス君、今の出来事を見てたかい?
さっき何があったか教えて貰えるかな?」
「あのね?ぼくとカイアちゃんが遊んでたらね?ヨシュアちゃんがカイアちゃんに抱きつこうとして枝にぶつかったの。そしたらカイアちゃんが泣いちゃったの。」
「ああ、そういうことか。急に抱きつかれて枝が顔にささって、お友だちに怪我をさせてしまってびっくりしちゃったんだな。
わざとじゃなくても、お友だちに怪我をさせたら、ごめんなさいって言わないとダメだぞ?カイア。」
カイアは少しずつ泣きやみながら、コクリとうなずく。
「ヨシュア、急に抱きついたの?
ダメよ、お友だちがびっくりしてしまうでしょう?
それにカイアちゃんは枝があるんだから、ケガして痛かったでしょうけど、そっと近付いてあげなかったあなたも悪いのよ?」
俺とヨシュア君のお母さんが、それぞれにそう言い聞かせる。
「ピョル……。」
「ごめんね、カイアちゃん。」
カイアとヨシュア君がお互いに泣きながらごめんなさいをする。
「ちょっと顔の傷を見せて?」
アシュリーさんがそこにやってきて、ヨシュア君の顔を見る。
「これなら精霊魔法で傷もなく直せるわ。
──はい、もう大丈夫よ。」
「すみません、アシュリーさん、ありがとうございます。」
「いえいえ。」
「さあ、仲良く遊ぼうな。」
「カイアちゃん、一緒に遊ぼう!」
さっきのことなどなかったかのように、ヨシュア君とナティス君が、両サイドから手をつないでカイアを連れていき、一緒に楽しそうに積み木をやりだした。
「すみませんでした、うちの子が、お子さんにケガをさせてしまって……。」
「いいえ、こちらこそ、驚かせてしまってすみませんでした。」
俺はヨシュア君のお母さんと、お互いに頭を下げる。
「もうなんでもないようですし、子どもたちも仲良くやってますから、お互い水に流すということでいかがですか?」
ミシェルさんと名乗ったヨシュア君のお母さんがそう言ってくれ、俺たちは微笑んだ。
人間ともこんな風に、簡単に手を取り合えればいいんだけどなあ。
「次はペシルミアを作りましょう。
これもコボルトの伝統料理よ。」
そう言って、アシュリーさんがハム(ペシ)を厚切りに切って軽く塩コショウを振って焼き出し、厚切りにした黄色と緑の何かの植物を、同じフライパンでバターを使って焼き始めた。
「アシュリーさん、それはなんですか?」
「これはルバとミシミアという果物よ。
これを焼いたペシに乗せて食べるの。」
なるほど、ハワイアンステーキのようなものか。ハワイにはハムステーキに、焼いた缶詰のパイナップルや、玉ねぎを乗せたステーキがある。見た目も綺麗なハムステーキで、パンに乗せて食べたりもする。
他の人達も同じように、ペシとルバとミシミアをフライパンで焼いて、ペシルミアを作ってゆく。
「他にも色々あるけれど、すべての家庭で定期的に作られているのはこの2つね。
あとはお祝いの時だとか、食べる時が決まっていることが多いのが、コボルトの料理なの。雨の日にしか食べない料理なんていうのもあるのよ?」
「それはきっとみんな興味あると思う。
俺が既に全部食べてみたいからな。」
アシュリーさんがふふっと笑い、
「さあ。みんな食べましょう。
ジョージのスープもあるわ!」
みんな一斉に、わあっと声を上げ、テーブルにめいめい料理を盛り付けて椅子に座る。
コボルトの子どもと遊んでいたカイアも戻ってきて、俺の膝の上に座った。
カオパットネーム、ペシルミア、キュプラスープ、エルテンスープがテーブルに並ぶ。既にいい匂いがあたりに広がり、みんな食べるのを今か今かと待っている。
オンスリーさんが立ち上がり、
「みな、飲み物は渡ったかな?
それでは恵みを与えて下さったドライアド様に感謝を捧げ、そして新しい友人ジョージを迎えられたことに、乾杯!」
みんながグラスを天に向けてかかげ、グラスに口をつけた後、ワイワイ、モリモリと料理を頬張りだした。
ペシルミアは、甘すぎず酸っぱすぎず、とても爽やかなハムステーキだった。俺はパイナップルが実は苦手で、ハワイアンステーキがそんなに好きではないのだが、これは実にうまい。キウイソースを固形で食べている気分だ。
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